rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年5月5日 社説「戦後復旧建設時期と千里馬時代英雄のように生き闘争しよう」

 

 標記社説は、「戦後復旧建設時期と千里馬時代英雄のように生き闘争しよう、これが党の訴えであり、時代の呼びかけである」として、その実践を呼びかけるものである。

 まず、この時期の「英雄」の特質として、①「偉大な首領様だけを絶対的に信じ、従った忠誠の一片丹心」、②「輝かしい未来を一日も早く手繰り寄せようとする火のような熱望と楽観、自力更生の革命意志」、③「集団主義」の3点を有していたことをあげる。

 その上で、「戦後復旧建設時期と千里馬時代英雄のように生き闘争することは、わが世代の当然の本分であり、義理である」と主張し、そのための課題として、次の点をあげる。

 第一は、「敬愛する金正恩同志がおられるがゆえに、我々の明日は輝かしく燦爛としており、勝利も確定的であるとの絶対不変の信念を堅持」することである。

 第二は、「党大会決定貫徹のための闘争を果敢に展開」することである。

 第三は、「『一人は全体のために、全体は一人のために』という共産主義スローガンをより高く掲げて進む」ことである。具体的には、「国家の利益、集団の利益を侵害する単位特殊化と本位主義の些細な要素も無慈悲に根こそぎにする」ことなどを求めている。

 第四は、「党及び勤労者団体組織の役割を決定的に高める」ことである。

 このうち第一から第三までは、前掲の①から③を踏襲し、今日的に表現したものであり、第四は、それらを実現するための具体的方法論と言えよう。

 標記社説の題目ともなっているスローガンは、4月23日付け本ブログで紹介したように同日の「労働新聞」でも「政論」二つを同時掲載した呼びかけがなされているなど、同社説が「時代の呼びかけ」と表現するとおり、最近の思想教化の中心題目となっている。

 その狙いは、結局のところ、同社説最後に掲げられた「今日の試練がいかに困難であると言っても、壁石一つまともなもののなかった戦後時期に比すれば何でもない」ことを強調することであろう。

2021年5月4日 「旧ソ連の経験を通じてみる北朝鮮経済」(補論)

 

 標記問題については、4月27,28日の本ブログで2回にわたって論じたのだが、本日別項で論じた「集団主義」に関する論説において、北朝鮮経済について「すべての部門、すべての単位が有機的に連結された集団経済」と主張されていたことに刺激されて、もう少し捕捉したいと思う。具体的には、「命令型経済体制」について、「非効率的ながらも、それなりのバランスを維持しつつ、体制を存続させていくことは可能」とした部分を敷衍したい。

 これに関連して、まず紹介したいのが4月24日付け「労働新聞」掲載の論説「経済事業に対する統一的指導は社会主義国家の基本任務の一つ」の中で、経済の均衡維持のための「国家の統一的指導」の必要性について、「国家的に成し遂げられる蓄積と消費の間の均衡、生産手段と消費財の間の均衡、支出と収入の間の均衡のようなものは言うまでもなく、採掘工業と加工工業の間の均衡、生産と輸送の間の均衡も、すべて国家の統一的指導の下においてのみまっとうに実現されうる」と主張していることである。

 このような言説は、まさに北朝鮮経済においては、『経済体制と経済政策』において「命令型経済」の基本的問題点として指摘している価格メカニズムが機能せず、それにかわる無数の調整活動を有限な能力しか持たない中央当局の命令によって処理しなければならないということを端的に物語っているように思える。

 そして、同書は、そのように「経済プロセスのルールと経済社会のメンバー(企業、労働者など)の個別的動機」が相反する場合には、「独裁的抑圧」ないしは「『文化大革命』や『洗脳』といった手段によって社会のメンバーの個別的な動機そのものを変えてしまわなければならないかもしれない」と述べている。今日の北朝鮮における「集団主義」の訴え(「単位特殊化、本位主義」批判)は、まさにこの「動機を変えてしま」おうとする試みといえよう。それが非常に困難であることは言うまでもないが、仮にそれが成功したとしても、それは、当該「命令」が実行されることを意味するだけであって、決して「最適経済状態」の実現なりそれへの接近を意味するものではない(非効率状態を内包したものである)ことに留意が必要であろう。

 また、同書は、「命令型経済」体制では、個別の単位における課題未達成がそこから供給を受ける予定になっている単位の生産不振を招くことで、経済全体に悪影響を波及させていくことを防止する機能が欠如しているため(資本主義体制下では、価格メカニズムにより緩和解消される)、個別の単位は、与えられた生産計画を「石にかじりついても」完遂することを要請されるという。ただ、実際には、それは不可能なので、各企業が原材料等の過剰な在庫を持つことによって、そうした波及へのバッファーとしているが、そうした在庫を持つこと自体がコストの面で不効率を生んでいると指摘する。

 本ブログで繰り返し紹介しているように北朝鮮が「党決定(=生産計画)の徹底貫徹」を繰り返し強調し、企業党組織による定期的な総括活動など様々な方法を通じて、そのために全力を注ぐことを求めているのは、まさにこの生産計画を「石にかじりついても」完遂しなければならないという必要性の表現といえよう。

 また、しばしば各単位に存在する「予備」の活用が強調されるのは、「過剰な在庫」の存在を前提にしているとも考えられる。ただ、一般的な原材料であれば一時的な供給不足は「在庫」で対応できるであろうが、電気の場合はどうするのであろうか。また、輸送も、その遅れに対して個別の単位では対応が困難と思われる。電力、鉄道運輸部門などが常に重視されている背景には、そういった理由があるとも考えられる。

 いずれにせよ、こうして原理的に考えると、仮に北朝鮮の主張するような「奇跡」が実現されたとしても、それなりの均衡・安定が確保できるだけであって、人々のまさに超人的努力を正当に反映した形で経済成長を実現することは期待しがたいことがわかる。

2021年5月4日 青年同盟大会フォローアップ

 

 標記大会は、4月29日閉幕したが、その後、様々な関連動向が続いたので、まとめて紹介したい。

 まず、翌30日には、大会参加者のための講習会が開催された。講師は、李日換党秘書兼勤労団体部長が務めた。また、同日には、青年中央会館において、「党中央にしたがって永遠に一路を行く」と題する青年中央芸術宣伝大公演が開催され、大会参加者が党幹部とともにこれを観覧した(以上、5月1日付け「労働新聞」報道)。

 更に30日には、金日成競技場において、李日換党秘書及び青年同盟大会参加者のほか平壌市内の青年学生が参加した「青年前衛決起集会」が開催され、大会で新任された文哲青年同盟中央委員会委員長が「報告」を行ったのに続き、同地方組織幹部らの決意表明や金正恩に捧げる「宣誓文」の採択などが行われ、閉幕後、「決意行進」が行われた(5月2日付け「労働新聞」報道)。

 その上で5月3日付けの「労働新聞」は、「敬愛する金正恩同志の歴史的書簡を高く奉じ朝鮮青年運動の新たな全盛期を開いていこう」と題する社説を掲載し、金正恩書簡の実践を呼びかけた。

 このほか、大会と直接関係するものではないが、4日の「労働新聞」は、「平安北道の数百名の青年が炭鉱、鉱山、農村、発電所などに志願進出した」ことを報じる記事を掲載している。ただし、同記事は、その時期については明示しておらず、これまでの累計数を改めて報じたもののように思える。

 不思議なのは、5月1日に金日成広場において大会参加者のためのマスゲーム、夜会、祝砲(花火)などが盛大に実施され、朝鮮中央テレビでは、その実況録画番組を放映したにもかかわらず、「労働新聞」には、それについての報道がまったくないことである。行事内容に関し、事後的に何か不都合な点が指摘されたのであろうか。いずれにせよ、極めて異例の出来事といえるのではないかと思うのだが、韓国の報道などでは特に問題視されていないようである。2日に対米、対韓関係の談話が相次いで発表されたため、関心がそちらに向いてしまったためかもしれないが、何か釈然としない。背景が注目される。

 

2021年5月4日 論説「社会主義威力は、すなわち集団主義威力である」

 

 本論説は、「社会主義は、団結した人民大衆の無窮無尽の力に基づき前進する社会である。集団主義の原則を確固として固守し、徹底して具現していくところに社会主義の勝利的前進がある」として、「集団主義」を称揚するもの。

 では、そこで言う集団主義とは何か、直接の説明はないが、「我々の言う集団とは単純な個別的成員の結合体ではなく、すべての人民が首領の下に一つの思想と志、意志で結合された社会政治的生命体を意味する」「社会政治的集団に忠実であるということは、首領に忠実であるということを意味し、首領に対する忠実性は、集団主義の最高表現になる」としていることからすると、要するに「首領に対する忠実性」を核とした団結心を意味する概念と考えられる。

 ただ、それを主張する今日的意義は、主に経済面にあると思われる。すなわち、「社会主義経済は、すべての部門、すべての単位が有機的に連結された集団経済である」ことを強調した上で、その運営において「最大に警戒すべきことは単位特殊化と本位主義である」とし、「すべての部門、すべての単位において自分の利益だけを追求する狭小な観点を大胆に打破し、国家と革命の利益をまず考え実践していく気風を徹底して確立」することを訴えている。結局、「単位特殊化と本位主義」批判のための「集団主義」強調というのが本当の狙いなのではないだろうか。

 また、社会生活の面に関しては、「集団主義は、人間に対する愛に基づいている」とした上で、「すべての人民が互いに助け導きつつ、志と心を一つに合わせ、全社会が徳と情で和睦した大家庭を為す」ことを求めている。

 多くの凡人には期待しがたいこうした理想的行動を「首領に対する忠実性」を原動力とすることによって実践させようというのが、ここで言う「集団主義」ということの本義なのかもしれない。

 ちなみに、同論説では、それをいかに浸透させるかの方法論への言及はないが、それに続けて掲載されている評論「人民大衆第一主義政治の地位」は、「我が党の人民大衆第一主義政治は、社会成員を愛と情でよりしっかりと結び付け、団結した人民の力を非常に増大させていく革命的な政治方式である」と主張している。これは、「人民大衆第一主義」の実践によって、「集団主義」が定着するとの考え方を示したものといえよう。

  なお、同評論は、「我が党の人民大衆第一主義政治」について、「社会主義基本政治方 式」であり、「自主政治、民主主義政治、仁徳政治を具現することについての社会主義社会の本質的要求を最上の高みで具現している政治方式である」と主張する。「人民大衆第一主義」についてのこうした定式化は(管見の限りでは)これまでに例がなく注目に値する。とりわけ「民主主義」に殊更言及しているのは、最近のバイデン政権の「人権問題」批判なども視野に入れているようにも思えるが考えすぎであろうか。

2021年5月2日 対韓・対米非難の談話を相次いで発出

 

 北朝鮮は、本日、①韓国における対北朝鮮ビラ散布を非難する金予正党中央委副部長の談話、②先のバイデン大統領の議会演説における北朝鮮関連発言を非難する権正根(音訳)外務省米国担当局長の談話、③米国国務省スポークスマンの北朝鮮人権問題に関する報道用コメントを非難する談話を相次いで発表した。

 まず、①は、先月、韓国の脱北者団体が北朝鮮への宣伝ビラ散布を実施したと明らかにしたことをとりあげ、「南朝鮮当局」がこれを「放置し、阻止しなかった」ことについて「不快感を隠すことができない」とした上で、「それに相応する行動を検討してみるであろう」「我々も、これからはこのまま黙ってみているわけにはいかない」などと反発を示唆するものであった。

 次に、②は、バイデン大統領の名指しは避けつつも、「米国執権者が就任後初めて国会で演説した」なかで、北朝鮮を「米国と世界の安保に対する『深刻な脅威』」と述べたことについて、「対北朝鮮敵対視政策を旧態依然として追及するとの意味」が込められているとして非難したものである。また、同演説で、「外交」と「抑止」でそれに対応するとしたことを踏まえて、「米国が主張する『外交』とは、自分らの敵対行為を覆い隠すための見掛けのよい看板に過ぎず、『抑止』はわれわれを核で威嚇するための手段」と決めつけている。

 その上で、「米国の新たな対朝鮮政策の根幹が何であるのかが鮮明になった以上、我々はやむを得ず相応する措置を取らざるを得なくなるであろうし、時間が経つほど米国は非常に深刻な状況に直面することになるであろう」と警告している。

 また、③は、米国国務省スポークスマンが金正恩の指示に基づく北朝鮮の国境統制強化などをとりあげて「人権侵害」と非難したことに対し、「対朝鮮敵対視政策の集中的な表現」と非難し、とりわけ、金正恩に言及したことについて、「我々の最高尊厳(金正恩の意)を冒涜したことは、我々との全面対決を準備しているとのはっきりとした信号」と強い反発を示している。さらに、人権問題への言及をバイデン大統領の演説内容と関連付けて、「『人権』を内政干渉の道具として、制度転覆のための政治的武器として悪用しつつ、『断固たる抑止』で我々を圧殺しようとの企図を公開的に表明した」ものときめつけ、「我々は、やむをえずそれに相応する措置を取らざるを得なくなった」「米国は、我々の警告を無視し軽挙妄動したことについて、必ず、必ず後悔することになるだろう」と厳しい対応を予告している。

 以上の談話のうち、①は、概ね想定の範囲内の形式的非難といえよう。「相応する行動を検討してみる」という程度では迫力不足といわざるをえない。ビラが飛ばされた以上、黙ってはいられないので一応出したという程度ではないだろうか。

 ただ、細かいことを言うと、金予正の肩書が前回談話(3月30日付け)の際の「宣伝扇動部副部長」から、今回はただの「副部長」に戻っている。また、以前は、米国向け談話(とりわけ大統領関連の内容)は同人名義であったが、最近は、同人の談話は、韓国向けに限られているし、同時に、対韓関係では以前は実務レベルが反応していた出来事(今回もそうだが)にも同人の名義で反応しているようにみえる。同人の先の談話にあったように祖国統一委員会等は廃止し、対韓窓口はもっぱら同人が受け持つことになったのだろうか(笑)。冗談はさておき、同人の担当なり役割に何らかの変化があったとみるべきであろう。

 一方、②と③は、まとめて検討すべきであろう。バイデン大統領の議会演説直後ではなく、この時期になって②が出されたのは、やはり③の出来事があって、それまで判然としなかった演説に対する評価が下されたことを示唆しているのではないだろうか。端的に言えば、人権問題批判が契機となって、核問題への姿勢も悪意に評価されたということである。それだけ、人権問題は、北朝鮮にとっては(批判に耐性ができている中国とは異なり)ナーバスな問題なのであろう。しかも、金正恩への批判的言及は、北朝鮮にとって看過できない「挑戦」である。米国国務省の今次人権問題への言及にそれほどの覚悟なり意志なりがあったとは思えないが、結果的にそうなってしまったということであろう。

 ただし、今後の対応(「相応する措置」の実施)については、②と③とは微妙な差があり、②は米国が今後も敵対視政策を続けるならという条件付きであるのに比し、③は、既定路線となったかの表現を用いている。北朝鮮が直ちに何か刺激的な行動に出るとも思えないが、従前の新政権の「政策見極め」段階が終わったことは間違いなく、米朝交渉再開の「機会の窓」は閉じられつつあるかのように見える。

 ちなみに、②,③に接して最も驚愕しているのは、韓国の文政権であろう。これまでは、バイデン大統領の演説やサキ報道官の発言などについて、韓国の政策の範囲内などと楽観的(得意の我田引水型?)に評価していた模様であり、今や5月下旬の文大統領の訪米を控えて、収拾策検討に大わらわになっているのではないだろうか。そうしてみると、①には、そうした韓国の「呑気さ」に対する痛棒と対米働きかけをしっかりやれとの激励の鞭の意味が含まれているようにも思える。

2021年4月30日 青年同盟大会閉幕、新名称は「社会主義愛国青年同盟」に

 

 本日の「労働新聞」は、27日開幕した標記大会が3日間の日程を終え、29日に閉幕したことを報じ、関連の記事を掲載している。

 同報道によると、まず、28,29両日における主な会議進行状況は、次のとおりである。

①第1議題(中央委員会事業総括)に関する「討論」:口頭での討論が6人、「書面討論」参加者が9人。

 初日の4人と合わせて19人の討論者の所属組織の内訳をみると、地域の青年同盟組織代表が平壌市6人、黄海北道が3人、咸鏡南道が2人、黄海南道平安北道・江原道・南浦市が各1人、その他機関の青年同盟組織代表が朝鮮人民軍2人、内閣、速度戦青年突撃隊が各1人となっている。咸鏡北道の代表がいないなど地域によって偏りがあるが、同盟員の数を反映しているのか、あるいは功績などを反映しているのかは不明である。

②第2議題(中央検査委委員会事業総括)に関する「報告」及び「討論」:報告者、討論者の氏名・所属、発言内容に関して具体的な報道なく、全会一致で報告が承認されたことのみ報道 

③第3議題(名称変更):「報告」に基づき、新たな名称を「社会主義愛国青年同盟」とする「決定書」を採択(同「決定書」(4月28日付け)は、別途全文を掲載)

④第4議題(規約改正):「報告」に基づき、規約改正に関する決定を全員一致で採択(改正内容等に関する言及なし) 

⑤第5議題(中央指導機関選挙):まず大会で中央委員を選出後、中央委員会第1回全員会議を開催して、執行委員会、委員長(文哲:音訳)及び副委員長9人を選出、組織委員会を構成、中央検査委委員会委員長・副委員長・委員を選出、中央委員会部長(複数)及び青年前衛新聞社主筆を任命(以上の中央委決定内容は、李日換党秘書が発表)。 

⑥第1議題に関する決定書の採択:新たに選出された中央指導機関メンバーにより「大会決定書草案作成委員会」を構成、同委員会での審議及び「代表たちが提起した創発的で建設的な意見を補充反映」した決定書を全員一致で採択(こうした決定書の採択方法は、先の党大会で取り入れられたもの。ただし、代表からの意見反映は初めての試みか?) 

⑦同盟旗授与:金正恩の「委任」により李日換党秘書が「社会主義愛国青年同盟旗」を授与 

金正恩の書簡伝達:「革命の新たな勝利に向けた歴史的進軍において社会主義愛国青年同盟の威力を力強く轟かせよ」と題する金正恩の書簡を金再才龍党組織指導部長が伝達。書簡骨子は後述 

⑨閉幕:「金正恩将軍、命懸けで死守せん」の吹奏・合唱で閉幕

 以上の内容のうちどこまでが2日目(28日)に、どこからが3日目(29日)に行われたのかは明記されていないが、③の決定書の日付が28日であることや議事の流れなどから、大会の場では28日に⑤の新中央委員の選出までが行われ、29日には新執行部が紹介された後、⑥以下が行われたのではないかと推測することができよう。

 更に、大会閉幕後と思われるが、29日に錦繡山太陽宮殿において、金正恩と大会参加者との記念写真撮影が行われたことも報じられている。

 金正恩の書簡は、相当長文のものだが、主な特徴は、次のとおりである。

①新たな名称について:「現段階における青年運動の性格と任務を直線的に明白に盛り込まれている」と評価し、「すべての青年が社会主義を生命のように貴重なものとみなし、その勝利のため代を継いで固く闘争する愛国青年」になるよう訴える一方、「同盟の金日成金正日主義化」という目標には何ら変更がない旨を力説 

②「現時期の青年同盟の基本目標」:1⃣「すべての青年を社会主義を信念として堅持する愛国青年としてしっかりと準備させる」こと、2⃣「党第8回大会決定貫徹のための実践闘争の中ですべての青年を栄えある社会主義建設者として育てること」、3⃣「青年を社会主義道徳と文化の真の主人とすること」、の3点を提示 

③青年同盟の組織強化について:思想教養活動のマンネリ化防止、「組織生活蹂躙者、未組織者問題」解決、基層組織に対する指導強化、幹部の役割強化(「腰掛的観念」の払拭)、党組織による指導強化などを強調

 以上の中で特に注目されたのは、②の1⃣に関し、「今の青年世代は、国が試練を経た苦難の時期に生まれ育ったために、我々式社会主義の真の優越性に対する実体験と不足し、甚だしくは一部誤った認識さえ抱いている」との評価を示していることである。これまで巷間では「苦難の行軍世代」の意識は以前の世代とは劇的に変化しているといわれてきたが、それを最高指導者が自認したことになる。

 金正恩は、その上で、「我々式社会主義の本質的特徴と優越性」を理解させること、そのために「千里馬時代青年たちの思想精神と闘争気風を見本とするようにする」とともに、「資本主義思想、個人利己主義をはじめとした反動的な思想要素との非妥協的な闘争」を訴えている。最後の点については、3⃣においても、更に敷衍して強調されている。また、2⃣においても、経済建設への貢献だけでなく、それを通じた青年の教化を強調しており、青年同盟に対しては、青年層に対する思想教化面での機能を何よりも重視していることが改めてうかがえる。

 名称変更の理由も、青年層に対する以上のような危機感を背景に、「金日成金正日主義」といった高邁なイデオロギー的概念では響かないので、より訴求力のある(分かりやすい)「社会主義」「愛国」の概念を掲げて、その浸透を図りたいとの狙いによるものと考えられる。

2021年4月29日 金日成金正日主義青年同盟第10回大会開催

 

 本日の「労働新聞」は、標記大会が去る27日に開幕したことを報じている。同報道による大会初日の開催状況は、概ね次のとおりである。

 主な出席者:李日換党秘書兼勤労団体部長、金才龍組織指導部長、権英鎮軍総政治局長

 議題:①中央委員会事業総括、②中央検査委員会事業総括、③同盟の名称変更(先の党大会で予告されていたもの)、④規約改正、⑤中央指導機関選挙

 第一議題(中央委員会事業総括)に関する「報告」(朴哲民委員長)

 第一議題に関する「討論」:軍青年同盟組織代表、平壌市青年同盟組織代表(2名)、速度戦青年突撃隊青年同盟代表の4名。

 このうち、「報告」骨子は、次のとおりである(番号、記号は筆者が便宜的に付したもの)。

1 前回大会以来5年間の活動成果:すべて「(金正恩総秘書同志の偉大な領導の輝かしい結実」として、感謝の意を表明。

2 「同盟事業に内在している欠陥」:①同盟内部事業に力を注いで取り組めなかった、②青少年の中で現れる反社会主義、非社会主義的現象との闘争を高い強度で展開できなかった、③青年たちを社会主義建設の先頭に立たせるための事業を大胆に規模を大きく積極的に組織展開できなかった、

 「(これら欠陥の)原因は、青年同盟幹部の思想的覚悟が不足し、誤った執務姿勢と無責任な事業態度を改められなかったことにあり、それによりもたらされた後禍は厳重である」

3 当面の課題

① 同盟組織の強化・思想教養活動の活発化

ア 党中央の絶対的権威確立

イ 5大教養事業の強化:革命伝統教養、忠実性教養、愛国主義教養、反帝階級教養、道徳教養を攻勢的に展開。青年学校運営の正常化など

ウ 初級組織の強化:初級団体委員長(党の細胞秘書に相当)らの指導育成など

エ 学生少年対策の強化:「知・徳・体を兼備した有能な革命人材、少年革命家」に育成、「世界的な科学者、発明家に育つよう」

オ 同盟幹部隊列の整備

カ 反社会主義、非社会主義的現象の根絶、社会主義生活様式の確立

②「5か年計画」の目標遂行に向け各部門の同盟組織を通じて貢献

ア 主要工業部門

イ 建設部門:白頭山英雄青年旅団(三池淵整備)、速度戦青年突撃隊(平壌市住宅建設)

ウ 農業・水産業軽工業部門

エ 人民軍、軍需工業部門

オ 科学研究部門

カ 文化(芸術、体育)部門

 以上の開催状況は、概ね想定内のものといえる。しいて注目点をあげるとすれば、これまでのところ、金正恩の出席ないし書簡送付などの関与が何もないことであろう。ただし、今後の日程の中で何らかの動きがある可能性もあろう。何もないままに終わってしまうと、ちょっと寂しい感じがする。