rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

10月15日 政論「軍民大団結の偉大な力」

 3日前に「軍民大団結」のポスターの記事を紹介したが、今日は、それを主題とした政論(あるテーマに関し、感情に訴えるような文章で奮起・取り組みを呼びかける長文の評論。社説よりも掲載頻度は低く、当局が特に重視しているテーマを取り上げるとみられる)が掲載されたので、注目部分を紹介したい。

 全体の論旨は、①軍民大団結は、金日成の抗日革命闘争以来継承されてきた、北朝鮮に特有の伝統であり、その勝利の歴史を生み出してきた力の源泉である、②その基本は、軍は人民のために奉仕し、人民は軍を献身的に支援するとの相互関係にある、③今後も、この美風を一層強化しなければならず、とくに軍は、社会主義建設の先頭に立って貢献していかなければならない、といったところ。

 このうち、人民の軍に対する支援に関しては、かつて「祖国があってこそ家庭もあり子供たちの明るい未来もあるとの信念」に基づき、人民が苦しい生活の中でも「援軍の道を瞬間も躊躇しなかった」ことが強調されている。このような言説は、既述の「家事よりも国事(とりわけ国防義務)を優先」することを訴えた評論とも共通しており興味深い。このほか「(資本主義国の軍隊のように)優越した先端武器を装備したとしても、人民の支援を得ることのできない軍隊は強軍になることができない」という主張の含意も注目される。

 ただ、この政論で、むしろ力点が置かれているのは、軍の人民に対する支援であり、金正恩が執権後の2012年以来、その実践に向けた指導に尽力してきたことが強調されている。

 それに関し現在の代表的取り組みとして挙げられているのは、三池渕郡の総合的整備、元山カルマ海岸観光地区建設、耀徳郡温泉観光地区建設、である。これらは、まさに現下の北朝鮮の3大建設課題と言える対象であり、軍が経済建設において文字通り先鋒的役割を果たしていることがうかがえる。

 また、軍への期待は、そのような現実的な取り組みにとどまらず、「党の思想と意図を絶対的な真理として仰ぎ、それを実現する道に身心を皆捧げて戦う決死貫徹の精神と闘争気風」を示すことであり、全人民がそれに一致することこそが「軍民大団結」の真髄とされている。この「政論」の究極的狙いも、そうした社会の実現にあると考えられる。

 金正恩執権以来、北朝鮮では、経済建設促進の鍵として「科学・技術」が強調されており、昨今、その傾向がますます加速されているかに見える。そのような中で、以上のような、いわば精神主義的主張が展開されていることをいかに考えるべきか。

 私は、両者は必ずしも矛盾するものではなく、いわば「和魂洋才」的発想に立って、車の両輪と位置付けられているものと考える。したがって、両者に偏りなく目配りしていくことが必要であり、片方だけに着目して何らかの結論を引き出したりすることは妥当でないと考える。このような見方は、私独自の北朝鮮分析の方法論にも関連するが、それについては、後日、機会を改めて紹介したい。