rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月6日 全国情報化成果展覧会―2019

 

 本日付け『労働新聞』には、「数字経済を志向する情報化熱風を一層高潮させよう 全国情報化成果展覧会―2019を見て」との共通題目の下、同博覧会に関する多くの記事が掲載されており、写真が添付されているものも少なくない。主な記事の例として、次のようなものがある。

〇 「情報事業発展の新たな道を開いて下さって」と題し、同部門に対する金正恩の熱意ある指導を強調する記事

〇 「死活的な要求として受け止めねばならない 省・中央機関展示台を見てまわって」と題し、政府各部門が情報化に本腰を入れて取り組んでいる旨を紹介する記事 

〇 「厳格で公正な競争、高い負けず嫌いの心 最優秀プログラム開発者は誰か」と題するプログラマー競演に関する記事

〇 「現実的意義が大きい情報技術製品(複数)」と題する各種製品紹介記事

〇 「情報産業革命の機関車らしく」と題し、理工系大学の最高峰とされる金策工業大学での関連研究活動などを紹介する記事

 この全国情報化成果展覧会は、記事によると、11月1日から平壌体育館において開催されており、連日満員とのことである。添付されている写真の限りでは、素人目からすると、なかなか立派な展示がなされているようにも見える。

 ちなみに、北朝鮮では、このところ、この展示会以外にも、様々な部門ごとに関連科学技術の研究・開発成果の展示や交流を目的とした展示会・会合などが盛んに開催されている。また『労働新聞』紙面でも、科学技術の研究・開発やその生産現場への応用・適用などで成果を上げた単位あるいは個人を顕彰する記事・写真などがほぼ連日のように掲載されている。

 このような動きは、北朝鮮が国策として科学技術の振興に全力で取り組んでいることを如実に示すものである。本ブログでは、かねて総論的には、金正恩の基本方針が思想面を通じた動員強化と科学技術の振興を車の両輪とした経済の活性化・発展である旨述べてきたつもりであるが、個別具体的な事例として科学技術関係の動向を紹介する機会が余りなく、思想部門に偏重した印象を与えてきたおそれを感じていたので、この際、上述のような実情をお知らせした次第である。

 これも繰り返しの主張になるが、北朝鮮分析においては、このような両面の動きをバランスよく観察することが必須と考える。批判的な立場から「思想面」にのみ着目してあいかわらずの精神主義一辺倒とけなすのも、逆に「改革」への希望的観測で科学技術振興策だけを強調して「昔日の面影を一変した」ときめつけるのも共に誤りである。

 そして、分析者として何よりも注目すべきは、北朝鮮指導部がこの両者をいかに調和させることができるかという点であろう。本日の記事に即して言えば、上述のように「情報化」を全面的に推進しつつ、一方で、かつてのように外部情報の流入を抑制できるのか、もちろん、それらの言葉の中での「情報」の意味は異なるが、それにせよ、両者をいかに切り分けて、前者を促進しつつ後者を抑制できるのか、指導部として難しいかじ取りを求められることになるのではないだろうか。そこが金正恩体制の今後を占うポイントと考える。