rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月15日 評論「唯一の基準―実践」ほか2題

 

 この評論のサブタイトルは、「忠実性教養を強化し、千万を党中央決死擁衛の戦闘闘士に育てよう」となっていて、これだけ読むと実に勇ましい、明日にでも戦争を始めそうな印象を受けるが、本文の主張は、それとはまったく異なるものである。

 本評論は、まず現下の厳しい情勢において、党中央(=金正恩)に対する忠実性を強化することの重要性を強調する。その上で、各人がそのような「忠実性」をどれだけ持っているかを評価する「唯一の基準」は「実践」であると断言する。「実践は、思想精神の反映であり、その結果である」からである。

 そこで、幹部も党員も勤労者も、「首領の思想と意図、党の路線と政策を言葉によってではなく、実践によって奉じて行」かなければならないのであり、そのためには、「高い実力を持つことが重要である。今は熱誠一つを持ってしては党に忠実たりえない」とされる。

 そして、同評論が結論として、各人がそのような実力に基づいてなすべき具体的事柄として何を訴えているかと言えば、「国家経済発展5か年戦略目標の遂行のための闘争に総邁進」することである。

 このような論法は、まさに昨日のブログで紹介した社説とも通底するものであり、今日の北朝鮮の思想教育の根本方針(=すべての力量を経済建設へ)を反映したものと言えよう。

 平壌国際農業及び食品展覧会

 昨日のブログで、全国化粧品展示会に関する報道を紹介したが、本日は、その続報が掲載されているほか、平壌国際農業及び食品展覧会(11日~14日、平壌体育館で開催)に関する記事も掲載されている。同記事によると、同展覧会では、「多用途化された現代的な農機械と優良品種の野菜種子、肥料と農薬、各種の健康食品」などが出品されており、なかでも注目されるものとして「我が国の珍奇な補薬剤と農産物などを原料として我々が作った機能性健康食品」があげられている。同記事は、北朝鮮のこれら国産製品が外国製品に劣らないなどと称賛した上で、「自分の土地に足を着け、世界を見る眼目」で今後とも関連製品等の開発・生産に努めるべきことを訴えている。

 一昨日のブログにおける主張の繰り返しになるが、穀物の深刻な不足が想定される状況下で、「機能性健康食品」の開発・生産を目玉にとりあげるであろうか。このような展覧会の開催自体、北朝鮮の農業政策が従前の穀物増産一辺倒から多様な食生活の追及に転換しつつあることを示唆していると考えられる。少なくとも、指導部の頭の中では、苦難の行軍時期のような「飢餓」の再現などといった状況は、想定されていないとみるべきであろう。

 金正恩が陽徳温泉文化休養地の建設場を現地指導

 本日は、金正恩が陽徳温泉文化休養地の建設場を昨月23日に続いて現地指導したことも報じられた、同地に対する金正恩の指導は4回目ということで、彼の思い入れの深さがうかがわれる。完工期限の厳守、多様な温泉施設の入念な仕上げや開業後の運営サービスに向けた周到な準備などに加えて、馬場の建設も指示したとされる。

 同地区の建設にあたっているのは主に軍の部隊であるとみられる。とすれば、軍は、その建設に従事する軍人の動員にとどまらず、建設に必要とされる機器・資材の調達、輸送などの任務も課せられているのであろう。物資不足、燃料不足に苦しみ北朝鮮において、そのような任務は、単なる軍人の動員以上に困難かつ負担の大きいものとなる。金正恩を同地で迎えた建設指揮部の責任者が人民武力省副相であることも、同地の建設が軍を挙げた支援に基づいて進められていることを示しているといえよう。

 これも昨日のブログの主張の繰り返しになるが、金正恩が来年早々からの対米対決モードへの再突入の可能性を真剣に捉えているとするなら、このような大規模な「温泉文化休養地」の建設を、しかも軍に負担をかけた形での建設を、これほど熱心に進めるであろうか。