rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月3日 金正恩が三池渕郡邑地域の竣工式に出席

 

 「邑」というのは日本で言えば「町」に当たり、「郡」の中心地であろう。「革命の聖地」とされる白頭山を抱える三池渕郡全体の大々的な改修整備事業の第二段階が同邑の整備であった。2日、同地で金正恩のほか崔竜海国務委員会第一副委員長、朴奉柱党副委員長(前総理)、金才竜総理らも出席して、同地域の竣工式が実施された。式典後には、建設に携わった「216師団」の分列行進、同隊員及び住民参加の舞踊会、花火大会などが開催されたという。

 同地域には、約4,000世代用の住宅と飲料工場、人民病院、邑総合商店、体育館など380余の公共・産業施設が新築されたとされ、今後、「山間文化都市の模範」とすることが目指されている。

 このような整備事業の狙いは、金正恩の構想の壮大さ、そしてその実現可能性を現実の成果によって強く印象付けることにあると考えられる。

 そのような狙いは、崔竜海が「竣工辞」の中で、「(同地域の完成により)党と人民の混然一致の不可抗力的威力と我が国家の無限大の自立的発展潜在力が満天下に誇示され、・・・我が党の自力更生路線の生活力が現実によって確証」されたと述べていることに端的に示されている。

 とりわけ注目されるのは、式典後、朴奉柱、金才竜はじめ出席した中央・地方の党・政府幹部が同地区の様々な施設を参観し、その壮大さに「驚嘆を禁じられ」ず、「偉大な党の領導にしたがって自分の力を信じ、一つに団結して進むとき、突き破れない難関も、出来ないこともなく、人民の夢と理想は必ず輝かしい現実として花咲くことになるとの確信を一層固く抱いた」とされている点である。

 このような報道ぶりは、金正恩の指導に対する確信を抱かせる対象には、一般住民のみならず、党・政府の幹部も含まれることを示すものといえよう。あるいは、後者こそが、その主たる対象となっているのかもしれない。

 金正恩と幹部との微妙な関係は、同日掲載された「三池渕郡邑地区建設闘争に関する朝鮮中央通信社詳報」(2日付け)からもうかがえる。同記事は、同地区の建設がもっぱら金正恩の直接的指導で推進された旨を強調するもので、彼が最初に同地整備の「遠大な構想」を提唱したのは2013年11月の訪問時であるが、当時、多くの関係者は小規模な整備で済ませようと考えており、2016年7月に至ってようやく金正恩の主導で建設部隊(216師団)が組織された後、作業が本格化され、その後も、彼が「自ら設計家、施工主、建設主」となって現地指導を繰り返し、今日の完成に至ったという。

 要するに、金正恩の構想に多くの幹部がついていけなかったというのである。しかし、彼の言う通りに信じてやれば、こんなに立派なものができるんだよ、というのが報道の言いたいことであろう。換言すると、金正恩は、それを実感させるために、敢えてこのような僻地でこれだけの建設工事を敢行したとも感じられる。

 なお、更に、来年の党創建75周年を目標に第三段階工事が進められる。いったいどのようなものが作られるのだろうか。