rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月6日 金正恩の「白頭山騎馬行軍」関連報道

 

 労働新聞紙上では、金正恩の「白頭山騎馬行軍」及びその出席下、竣工式を迎えた仲坪農場の紹介などに関する記事が大々的にとりあげられている。それらを通じて、北朝鮮の目指すところが4日の本ブログに記述のとおり、革命伝統教養を核とした思想引き締めによる経済建設の促進であることが改めて確認できると考える。

 その紹介に先立ち、その前後の出来事を整理しておきたい(カッコ内は報道日)。

2日(3日) 三池渕郡邑地区竣工式(金正恩崔竜海、朴奉柱、金才竜出席)

2日(3日) 党・政府の幹部、三池渕郡邑地区を参観(朴奉柱、金才竜)

不詳(4日) 金正恩白頭山騎馬行軍(崔竜海同行)

3日(4日) 中坪野菜温室農場、養苗場竣工式(金正恩崔竜海、朴奉柱、金才竜出席)

3日(4日) 党中央委員会第5期全員会議12月下旬招集決定(政治局常務委員会)

4日(5日) 魚郎川発電所発向堰堤竣工式(朴奉柱、金才竜出席)

5日(6日) 仲坪地区新築住宅への「利用許可証」授与集会

 なお、この間にも、平壌では全国水産部門科学技術成果展示会(科学技術殿堂、3~6日。同じ場所・期日で豆農事成果発表会も)など各種展示会が開催されている。

 上記のうち、中央委員会全員会議の招集決定については、決定日とされる3日には、前後の報道から、常務委員会を構成する金正恩崔竜海、朴奉柱の3人が三池渕郡付近にいたと見られるので、そこで決められたのであろうか。4日のブログで「主なメンバーが白頭山にいた」旨書いたが、勘違いによる誤りだったので、お詫びして訂正したい。

 また、魚郎川発電所発向(音訳)堰堤は、竣工式の写真から、人海戦術で膨大な建設工事が展開されたことがうかがわれる。出席者の顔ぶれから見ても、文字どおり国を挙げた工事であったのであろう。

 6日の労働新聞紙上では、先日の三池渕郡邑地区の紹介記事に匹敵する形で、仲坪農場・養苗場の施設及び同地区に合わせて新築された住宅、公共施設などについて、「天地開闢」とまで称して、大々的に紹介・称賛している。また、同地区建設における軍の貢献ぶりを紹介する朝鮮中央通信記事を掲載、軍が同工事に着手したのは昨年9月末であり、以後竣工までの短期間に、総面積200余町歩、盛り土工事量だけで180万㎥、320棟の現代的野菜温室、590余世帯用の住宅、多数の公共建築物、生産施設を建築する偉業を達成したと報じている。

 最後に、金正恩の「白頭山騎馬行軍」関連で、その際、彼が「革命の指揮メンバー」を対象に学ぶべきとして比喩的に用いた「白頭山大学」との言葉をタイトルにした記事(6日掲載、「本社記者 孫英喜(音訳)」)の一部をやや長くなるが紹介したい。まさに、金正恩の意向を代弁するものと考えられるからである。

 「今日、我々の前に提起された課題は膨大であり、条件は依然として難しい。

 幹部が直面する難関を克服し革命の前に帯びた自らの責任と本分をまっとうしようとするなら、白頭で想像された屈することのない攻撃精神でしっかりと武装しなければならない。白頭の革命精神、白頭の剣精神で生き、闘争する人だけが託された革命任務を立派に遂行することができる。今日、我が党が白頭山革命戦績地踏査を通じた『白頭山大学』を出ることについて強調しているのも、このような意図からである」

 金正恩の「意図」は、よく分かったが、そこで疑問に感じるのは、そのようにして今まさに開始されようとしている新たな思想教養キャンペーンと一昨年末以来展開されてきた「我が国家第一主義精神」キャンペーンとの関係である。思い込みかもしれないが、後者については、国旗などをシンボルとして用いたナショナリズム喚起を主な核にしたもので、「革命」とか「社会主義」などのいわばイデオロギー的要素は比較的希薄であったように感じられた。そして、その理由としては、そういった伝統的イデオロギー概念は既に使い古され効力を失ったと判断されたためではないかと勝手に解釈していた。

 今回、改めて「革命伝統」を核としたキャンペーンを開始する金正恩がそのような問題について、どのような認識・判断しているのか、大いに関心がもたれるところである。