rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月8日 金正恩、陽徳温泉文化休養地の「竣工式」に出席(12月7日)

 

 このところ各種大規模建設工事の完成が報じられてきたところ、今日は、標記報道があった。同地については、金正恩の現地指導が最近だけでも10月25日及び11月15日の2回報じられており、他の施設同様、あるいはそれ以上に金正恩の直接的な構想・指導に基づき建設されたものであることが強調されている。

 この日掲載された同施設建設に関する朝鮮中央通信詳報によると、その整備は、2018年10月、金正恩が同地を現地指導した際に示した構想に基づくもので、具体的な工事の着手は同年11月であり、166万㎡の敷地に旅館(ホテル)区画、治療・療養区画、休養区画、総合奉仕(サービス)区画、野外温泉場区画、スキー場区画、乗馬場区画、公共建物及び住宅(千数百世帯用)区画などが建設されたという。同地区整備の特徴としては、元々あった温泉施設の充実に加えて、スキー場及び乗馬場などを新たに建設した総合的な施設となったことが強調されており、もちろん、それらも金正恩の指示によるものとされる。あるいはヨーロッパの温泉スパ施設などをヒントにしているのであろうか。

 同地区の建設は、所在する平安南道はもちろん隣接する江原道の住民も相当動員された模様だが、主戦力となったのは軍であったとみられる。そのことは、金正恩が竣工式に合わせ、軍人建設者たちと記念写真を撮影したことからもうかがえる。

 なお、竣工式で興味深いのは、出席者として、崔竜海、朴奉柱及び党中央副委員長ら現役幹部に加えて、「党と政府の重要職責で長い期間働いてきた老幹部」として金英南、楊享ソップ、崔英林、金基南、崔泰福の名前が報じられたことである。まず彼らに温泉を味あわせてやろうとの金正恩の恩情であろうか。

 いずれにせよ、同地区は、今後、利用者をして、経済制裁などによる困難な状況下においても、金正恩の賢明な領導とそれに忠実な人民の献身的な努力によって、人民の楽園を現実のものとすることができるということを体感させる、いわば「実物教材」としての役割を果たしていくことになるのであろう。おそらく、まずは、各分野において特出する成果をあげた模範的人物(例えば、多収穫農民など)が同地の利用を許されるのでないだろうか。

 そうであれば、同地区は、金正恩の指導の偉大な成果を誇示するという単なる「展示的効果」のみならず、広く勤労者らに対しそこを訪問できるよう成果を上げるべく努力することの動機を与えるというインセンティブ効果も発揮することになると考えられる。