rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月8日 論説「党政策貫徹を法的に担保する上で提起される重要な問題」

 

 標記論説は、「司法検察機関の役割を高める」ことを主題としたものである。何故、この時期にそれが掲載されたのか、論説中には、特段の記念日とかへの言及はない。あるいは、10日から開催予定の最高人民会議に関連するのかもしれないが、判然としない。後述するような様々な違法行為・現象が当事者である党員・幹部らに対する政治・思想的訴えでは収拾できず、司法検察機関の力による外部からの取り締まりが必要という状況が生まれているのかもしれない。

 いずれにせよ、論説は、司法検察機関の基本的性格を、「首領保衛、政策保衛、制度保衛、人民保衛の重大な使命を帯びた、党の頼もしい政治的保衛隊、人民民主主義独裁の威力ある武器である」とした上で、その当面の課題を次の二点に分けて論じている。

 第一は、「すべての部門、すべての単位において党の構想と意図を実現することに優先的な力を注ぐよう法的監視と統制を強化すること」である。ただし、ここで言う「党の構想と意図」とは、具体的にはそれを反映したものとされる法規を指すようで、それがしっかりと守られるように監視・統制せよとの趣旨と考えられる。そのことは、「すべての部門、すべての単位が法に基づいて活動し、国家の法規範と規定を自覚的に義務的に守ってこそ、全社会に革命的な制度と秩序を立て、党政策を徹底して執行できる」との表現からもうかがえる。

 論説は、続けて、「経済強国建設と人民経済向上、国の科学技術発展に決定的転換を起こすよう法的統制を強化しなければならない」と主張する。これは、前述のような意味での法秩序維持(=党政策実現)が経済建設の促進を狙いとするものであり、かつその前提となるものであるとの認識を示すものといえよう。

 更に、論説は、「国土管理と環境保護部門の党政策執行状況、法規範遵守状況を定期的に監視し統制」することも求めている。

 ここで注目すべきなのは、司法・検察機関による監視・統制の対象として想定されているのが、「部門、単位」すなわち国家機関・企業所などであることである。まさに組織ぐるみ、企業ぐるみの不正経理や環境汚染などの取り締まりが期待されているのであろう。

 第二は、「党の路線と政策執行を阻害するあらゆる違法現象との闘争を強く展開する」ことである。ここでいう「違法現象」には、二つの類型が想定されているようで、その一つは、「設備管理、資材管理、財政管理を国家の法と規定どおり行わず、勝手に流用・浪費し、(又は)死蔵すること」「国家財産や社会の共同財産を秘密に横領して自分のものにしてしまうような現象」である。

 もう一つは、「社会主義経済管理秩序を侵害し国家財産を貪汚浪費する現象」であり、具体的には「経済指導機関幹部が経済組織(計画の意味)事業と指揮をしっかり行わず、経済管理秩序に反する現象、国家財産と社会協同団体財産を浪費する現象、国家財産を略取し国家に損失を与える違法行為などと経済生活で表れる非社会主義的現象」などがあげられている。

 前者と後者の区別は判然としないが、前者は従業員レベルでの不正行為、後者は幹部らの権力型不正行為であろうか。

 また、第一と第二の課題の関係も必ずしも明らかでないが、前者は組織ぐるみによる組織の利益を図るために国益を損なうような行為の抑制、後者は、個人的な利得を目指しての明白な犯罪行為の取り締まり、ということであろうか。いずれにせよ、本論説は、北朝鮮社会でこういった行為・現象が蔓延していることを改めてうかがわせるものといえよう。