rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月23日 社説「正面突破戦において集団主義の威力を力強く轟かせよう」

 

 標記社説は、冒頭、「集団主義の威力を高く発揮することが今日の正面突破戦の勝利のための死活的で重要な事業」であるとして、そのための課題を次のように主張する。

 第一は、「すべての人民が集団主義精神でより徹底して武装」することである。では、「集団主義」とは何かということになるが、社説には、それを直接説明する文言は見当たらない。しかし、その文脈の中で、「集団の利益の中に自分自身の利益もあるということを深く肝に銘じ、社会と集団のためすべてを皆捧げて闘争しなければならない」「個人主義、利己主義、本位主義をはじめとした古い思想残滓を根こそぎにし」云々とあることから、要するに、自己の利益よりも公の利益を優先させる考え方と見て間違いないであろう。そういう考え方を社会全体に徹底することがまず必要ということである。

 第二は、「すべての事業において国家の利益、集団の利益を第一に置く気風を徹底して確立」することである。具体的には、「国家の統一的指揮の下に生産と建設を進める強い規律を確立」することや「すべての事業を展望性を持って、国家に貢献できるように設計し実践」することなどを求めている。前項が個人の思想内容の次元の要求であったのに対し、これは、各単位の活動の次元での要求と考えられる。

 第三は、「社会生活のすべての分野において集団主義的原則を徹底して具現」することである。これは、社会生活における個人的行動の次元の要求のようであるが、もっぱら否定的な事例に対する対応が強調されている。すなわち「社会生活のあれこれにおいて現れる非社会主義的現象と自分だけを考えて国の利益を侵害するあらゆる不正的行為をなくすための法的闘争」の強化である。このような主張は、もはや思想教育・宣伝だけでは対応できず、法的取り締まりが必要になってきていることの反映とも考えられる。

 第四は、「幹部が集団主義精神を具現する上で先駆者的役割を果たす」ことである。ここでも「単位の利益より国家的利益をまず考え、そこにすべてを服従させていく真の愛国者」になることが求められている。

 そして、最後に「党組織の役割を決定的に高める」ことが主張されている。

 以上のような社説の主張は、「集団主義」という概念を用いているものの、具体的に求めていること、戒めていることは、様々な概念を用いて、かねて繰り返されてきた社会紀綱の引締めの主張とほとんど重複している。

 結局、そこからうかがえる状況を一言で言えば、社会全体に「私」よりも「公」を優先させるべきとの概念が欠如しており、そのような考え方を扶植することが指導部の至上命題(社説の主張に従えば、円滑な国家運営の「死活的」な前提)になっている、ということであろう。このような見方は、世間一般の北朝鮮イメージとは相当乖離したものであるが、それが実情ではないだろうか。