rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月25日 社説「党の領導に限りなく忠実な我が革命武力は必勝不敗である」

 

 本日4月25日は、金日成が1932年の同日、抗日パルチザン部隊である「朝鮮人民革命軍」を創建した88周年の記念日とされ、「労働新聞」にも、各種関連記事が満載である。

 標記社説は、その筆頭に掲げられたもので、金日成による同軍創建とその後の軍事指導において金日成金正日両人が果たした業績を称賛しつつも、今日における金正恩の役割により多くの部分を費やしている。

 まず、総論的に、「我が革命武力を自らの革命的本性に忠実な党の武装力としてより強化発展させようということは、敬愛する最高司令官金正恩同志の確固不動の意志である」とするとともに、「我々の革命武力」の特性として、「党の領導的権威をくまなく擁衛していく第一決死隊」「党の軍事戦略思想と主体戦法でしっかりと武装した無敵必勝の武装隊伍」であることを強調する。

 社説は、その上で、軍強化のための当面の課題として次のような方針を示している。第一は、「全軍に敬愛する最高司令官金正恩同志の唯一的領軍体系をより徹底して確立」することである。ここで具体的に求められるのは、「最高司令官同志が提示された政治思想強軍化、道徳強軍化を二本柱として堅持」すること、「最高領導者同志の唯一的領導の下で一体となって動く革命的軍風と軍紀が全軍にみなぎる」ことなどである。

 第二は、「全軍が白頭山精神で武装」することである。注目されるのは、「特に指揮メンバーが『白頭山大学』の永遠の学生になって白頭山精神で自らを絶え間なく鍛錬」することが求められていることである。

 第三は、「社会主義建設の新たな前進活路を開くための正面突破戦において党軍としての本態を力強く誇示」することである。そのため「社会主義建設の主要戦区において、敵対勢力どもを戦慄させる創造と変革の奇跡的成果」を挙げることが求められる。

 以上のような軍に対する要求は、いずれもかねてのもので新味はないともいえるが、注目されるのは、金正恩の指導への絶対的服従軍紀確立、経済建設への貢献などが強調される一方、軍本来の任務である「祖国保衛」や演習強化など、軍事力の直接的強化に関する課題が等閑視されていることである。敵を戦慄させる方法は、経済建設の成果によってとされているのである。

 次に、「我が軍隊の強大性の源泉」と題する評論を紹介したい。同論評は、北朝鮮における軍の位置づけ、軍に対する基本認識を端的に示している。

 まず、冒頭に金正恩に次に言葉を引用する。「朝鮮人民軍は、我が党の懐から生まれ育った党の軍隊であり、人民軍隊の強大性の源泉は、党の革命思想と領導にあります」。

 そして、そのような党の使命について、「革命武力は本性において党の軍隊である。首領によって創建され、首領の思想と領導を生命線として存在し発展する革命武力の基本使命は、党の偉業を銃で固く担保することである」と主張する。

 また、標題の「強大性の源泉」に関連しては、「政治思想強軍化、道徳強軍化を軍建設の二本柱として堅持し、思想革命を力強く展開するようにされた敬愛する元帥様(金正恩)の領導は、人民軍隊が革命的党軍としての面貌をより完璧に備えて行けるようにする原動力である」とする。「政治思想強軍化、道徳強軍化を二本柱とする」ことは、前掲社説にも掲げられた課題であり、金正恩時代における軍建設の基本方針と考えられる。

 以上のように本日の社説や評論においては、思想的側面に集中した軍建設方針が主張されているといえる。その理由としては、4月25日が正規軍である朝鮮人民軍の創建記念日ではなく、抗日パルチザン部隊の創建記念日であることから、それを継承する軍の政治・思想的伝統を強調する狙いから、そのような内容になっていると説明することも可能であろう。しかし、パルチザン部隊であるからこその神出鬼没な戦法に基づく「戦果」(もちろん神話であるが)を宣伝するなどしてし、それを継承した精強な人民軍建設を主張することも可能なはずである。それをせずに、パルチザン部隊から主に継承すべきものとして「政治性・思想性」を前面に押し立てているということ自体が一つの選択の結果であり、それはまさに今日的な政策上の必要性なり目的意識を反映していると考えるのがより正確であろう。それは何か、端的に言えば、軍は、指導者に忠実で、人民に迷惑を掛けるなど悪いことをせず、経済建設に励むことが何より大切であり、対外的な戦闘力の保持・発揮はその次の課題、ということではないだろうか。