rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

5月7日 社説「人民経済先行部門において生産的高揚を起こしていこう」

 

 標記社説は、冒頭、「順川リン肥料工場が化学工業部門の見本として立派に築かれ、正面突破戦の初の勝戦砲声」となったことを掲げた上で、それを契機に、4年前に開催された7党大会で策定された「人民経済先行部門、基礎工業部門を正常軌道に乗せることについての課題」の実現を訴えるものである。

 では「人民経済先行部門」とは何を指すかと言うと、社説は、筆頭に「経済強国建設の双柱である金属工業部門と化学工業部門」をあげ、「我が国の原料、燃料に依拠して生産を正常化するための闘争を力強く展開し、設備と生産工程の現代化を実現」することを訴えている。

 次にあげられるのが「電力工業部門」であり、「党の政策的要求に合うよう経営戦略を正しく立て、生産を高い水準で正常化」することが課題とされる。

 それに続くのが「石炭工業部門」であり、「緊張した石炭問題を解決するための対策を講究」すること、とりわけ「掘削事業を優先」させることが求められる。

 最後にあげられるのが「鉄道運輸部門」であり、「軍隊のような強い規律を立て、・・・経済建設と人民生活向上に必要な物資の輸送を責任を持って保障」するよう求められている。

 そして、以上のような課題実現のためには、「幹部達がいつよりも奮発し革命的に働いていくこと」及び「大衆の思想精神力が最大限に発動される」ことが必要であるとし、「人民経済先行部門の各級党組織は・・・思想事業を進攻的に展開」し、また、「(他の部門の)すべての党組織は人民経済先行部門を積極的に支援し、先行部門に対する保障事業をしっかり行うよう」努めることを訴えている。

 以上の主張で各部門共通の課題として繰り返されるのが「正常化」という表現である。そこからうかがえるのは、燃料となる石炭不足のため電力が不足し、電気がないから鉄道も円滑に走らず、原料・物資が運べないので他部門にも原料・素材・燃料等が供給できず生産設備をフル稼働できないという悪循環である。このような状況は、北朝鮮経済の宿痾ともいうべきもので、社説の主張は、それがいまだに改善されていないことを改めて示すものといえる。建設分野では、次々に壮大な建造物が姿を現すが、既存の生産現場の状況はなかなか改善しないようである。

 標題は、「生産的高揚」を掲げて威勢が良いが、実際に求められているのは、それとは裏腹な「正常化」である。しかも、その方法論として挙げられているのが「思想事業強化」というのでは、なんとも寂しい印象を拭えない。