rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

5月22日 社説「青年達を党の思想と偉業に限りなく忠実な前衛闘士として準備させよう」

 

 北朝鮮指導部が青年層の動揺を強く懸念し、その思想教育に腐心していることは、繰り返し指摘してきたところである。標記社説は、まさにそのような青年教育の目標などについてまとまった形で論じたものである。

 社説は、冒頭、同問題の重要性について、「青年達をいかに教養(教育)し、準備させるかに党と革命の運命、国と民族の興亡盛衰がかかっている」と強調した上で、青年教育の狙いについて、「総体的目標は、青年達を真の金日成金正日主義精粋分子に育てることである」とし、それが意味するものをいくつかの側面から論じている。

 まず何よりも強調されるのは、忠誠心である。すなわち「党中央の周囲に思想意志的に、道徳義理的に固く結集し常に党に従って真っすぐに、力強く前進する党の頼もしい青年前衛」とすることである。

 同時に求められるのは、献身性であり、「祖国の富強繁栄のための闘争に一身を捧げる熱烈な愛国者」に育てることである。そこで求められるのは、「社会主義祖国の懐の中で幸福だけを享受する世代ではなく、有り難い母なる祖国の恩徳に報いる一念で心臓を燃やす真の人間」である。このような訴えの背景には、おそらく若年層の中で、国家社会からの受益を当然の権利として主張する風潮が存在するのであろう。

 加えて、革命性、すなわち「帝国主義者どもの思想文化的浸透策動に常に覚醒を高め、あらゆる不健全で異色的な生活様式に反対し強く闘争する」ように教育することが求められる。なお、この点に関する言及は、他の箇所でも繰り返されており、そのような意味での青年層の動揺に対する指導部の強い危機感をにじませている。

 更に道徳心の涵養も求められる。「道徳紀綱を徹底して確立し、革命先輩を優待し、師匠(教師の意?)と目上の人を尊敬し、集団の団結と家庭の和睦を図り、社会公衆道徳と生活秩序を自覚的に守っていく」ようにすることである。

 社説は、青年教育の進め方についても言及している。その担当者として第一義的に期待されるのは、「各級青年同盟組織」である。そして、そのような活動を進める上での留意点として、「青年達の年齢心理的特性と時代の要求に合わせて・・・青年大衆の心琴に触れ青春の熱情がほとばしるような切実で実効性の大きい教養方法を積極的に探究し活用」することが求められている。あわせて、党がそのような青年同盟組織に対する指導を強化することも要求される。青年同盟が党の傘下組織とされている以上、当然の要求といえよう。

 ちなみに、青年同盟の正式名称は、2016年8月の第9回大会において、「金日成社会主義青年同盟」から「金日成金正日主義青年同盟」に改称された。旧称は、金日成死去後の1996年1月に、それ以前の「朝鮮社会主義労働青年同盟」から改められたもので、最高指導者の交代ごとに改称が繰り返されていることになる。そして、同大会では、金正恩が自ら演説を行い、「青年同盟は思想教育団体であり、青年に対する思想教育活動は、青年同盟の基本任務です」とした上で、「青年教育の総体的目標は、すべての青年を真の金日成金正日主義者に育てることです」と述べている。前述社説の主張は、この金正恩の演説の趣旨の即したものといえよう。