rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

6月25日 社説「祖国守護精神は主体朝鮮の魂であり必勝の武器である」(6月26日記)

 

 標記社説は、いうまでもなく朝鮮戦争開戦70周年に際してのもので、開戦責任ついては当然、「侵略戦争の導火線に火をつけた米帝は、膨大な兵力と戦争装備を動員して全国を焼け野原にした」と米国を非難した上で、それに抵抗して祖国を防衛した「祖国守護精神」の意義を次のように敷衍している。

 まず、「戦火の火の手の中で創造された祖国守護精神は、今日も貴重であり、明日も貴重である」として、その継承の必要性を強調する。すなわち、「新世代たちが革命隊伍の主力をなしている今日、祖国守護精神の貴重性は、より一層浮き彫りにされている」として、「前世代が創造した偉大な精神が教科書の文章や偉勲談だけに残っていては、絶対にならない。新世代が祖国守護精神を魂によって血脈によって、しっかりと引き継いでこそ、社会主義の前進発展がより加速化され、祖国と人民の安全が固く担保されることになる」として、「新世代」の教化の必要性を訴えている。

 次に、「すべての人民が党の領導的権威を決死擁衛しなければならない」として、「1950年代の祖国守護精神における基本核は、首領に対する忠実性である」ことを強調する。

 更に、「1950年代の祖国守護精神によって、社会主義強国建設の進撃路を力強く切り開かなければならない」として、今日的課題である経済建設への献身を呼びかける。

 その上で、「停戦は平和ではない。今、敵どもは、我々が6・25(=開戦記念日)を失い、心のボタンを緩める、その瞬間を狙っている。・・・オオカミは羊に変わることはできない」として、警戒心の弛緩を戒めている。とりわけ「青少年たちが帝国主義者どもの思想文化的浸透策動の反動的本質と危険性をしっかり理解するように・・・教養事業を実質的に進行しなければならない」として、改めて青少年教化の重要性を強調している。

 なお、「労働新聞」は、26日にも、「祖国守護精神は、代を継いで継承していくべき思想精神的財富」と題する論説を掲載し、ほぼ同様の主張を繰り返している。

 ただし、これまでの報道を見る限り、朝鮮戦争開戦記念日に際して恒例の反米大衆集会などは開催されていない。これは、聯合通信によると、初の米朝首脳会談があった2018年以来3年連続の現象とのことで(つまり2017年までは毎年開催)、今年が開戦70周年という節目の年にあたることを勘案すると、北朝鮮が対米関係については、引き続き一定の配慮を払っていることを如実に示すものと考えられる。トランプ大統領との交渉は、いよいよ大詰めを迎えるのではないだろうか。