rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

7月12日 論説「党政策の生活力が人民生活に表れるようにしなければならない」

 

 標記論説は、まず「今日、我が党は、党事業の主たる力を人民生活向上にめぐらして」いることを前提に、その成果(=生活力)が人民生活の向上という形で具現化されることを求めるものである。「人民生活」の「確保」ではなく、「向上」を目指していることは、「人民生活において昨日と今日が異なり、今日と明日が異なる実際的な変化、目に見える進展」を強調していることに示される。

 論説は、そのような意味での「党政策の生活力が人民生活において現れるようにすること」の意義を二つあげている。最初は、「我が党を人民の絶対的な支持と信頼を受ける嚮導的力量としてより強化発展させる」ことである。換言すると、「党(つまり既存体制)に対する人民大衆の絶対的な支持と信頼は、人民生活向上のための党の領導力と実践力によって担保される」のである。

 同時にそれは、「社会主義強国建設偉業を粘り強く前進させるための要求」でもあると主張する。なぜなら、「党の(人民生活向上に向けた)恩情が大きいほど、党の社会主義強国建設構想を果敢な実践闘争において奉じていこうとの我が人民の革命的風貌はより高く発揮されるようになる」からである。要するに、人々は、自らの生活水準の向上を実感してこそ、日々の勤労にも意欲的に取り組むであろうということである。

 論説は、結びとして、党政策の「生活力」発揮における幹部の役割を強調している。すなわち、「党政策がいかに正当であるといっても、幹部が自分の役割を尽くさなければ、それ(党政策)がまともに執行され得ず、実生活において効果を発揮することができない」のであるから、「すべての幹部は、非常な覚悟と決死の意志によって党政策を無条件に最後まで貫徹することによって、人民生活安定向上において顕著な成果と前進を成し遂げなければならない」と訴えている。

 同論説の本文部分の主張は、金正恩が主唱する「人民生活向上」ないし「人民大衆第一主義」「滅私服務」といった目標が、人民の既存体制に対する支持の獲得及びその動員の強化(勤労意欲の引き出し)を主な狙いとしたものであることを率直に認めたものといえよう。

 また、結論部分の主張は、昨日のブログで紹介した「党会議決定の徹底貫徹」を訴える論説においても共通するものである。そのような主張が日々繰り返されているところに、金正恩の、自らの意図を誠実に執行していないとみなす幹部の執務姿勢に対する不満・焦慮の根深さがうかがえる。