rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

8月6日 党中央委政務局第7期第4回会議を開催

 

 標記会議が8月5日に開催されたことが報じられた。政務局会議とは、党副委員長すなわちかつての党秘書を構成メンバーとするもので、党中央の各部署責任者による党運営に関する実務会議といえよう。その開催が報道されるのは初めてのことである。

 報道された今次会議の参加者は、金正恩のほか、党副委員長である朴奉柱(経済全般)、李炳哲(軍需)、李日愌(宣伝扇動)、崔輝(勤労団体)、金徳訓(経済・財政)、朴泰成(法制)、金英哲(対南)、金衡俊(国際)の8人(カッコ内は担当分野・推定を含む)と「党中央委員会主要部署幹部たち」とされる。金正恩を中心とした長方形テーブルに副委員長8人が着席し、後者については、李萬建(前組織指導部長)、許哲萬(幹部部長)、趙勇元(組織指導部第一副部長)の3人がその後ろの長椅子に着席した写真が報じられているが、別の写真では、その下位に更に少なくとも3人が着席していたことが示されている。おそらく他の主要部署の責任者であろう。李萬建以下の3人がやや別格の扱いになっているのは、政務局の構成メンバーではないが政治局メンバーであるからであろう。なお、金徳訓については、先の政治局緊急拡大会議に欠席し更迭説もあったが、今次報道で少なくとも副委員長の地位にあることは確認されたことになる(報道順からは、政治局委員の地位も維持と推測可能)。

 会議内容は、機構改編・人事など組織関係とコロナ防疫対策関係に大別できる。

 まず、前者については、①党中央委員会への新たな部署の設置を検討審議、②党内の幹部事業(人事関連業務の意味)体系を画期的に改善するための方法的問題を研究協議、③政府機関の主要職制幹部の事業状況を評価し、該当の対策を合意、したとされる。

 一方、後者については、①国家最大非常体制の要求により完全封鎖された開城市の防疫状況と実態報告を了解、②封鎖地域人民の生活安全のため食糧と生活補助金を党中央が特別支援することを討議決定、③これと関連した緊急措置を取ることを該当部門に指示、したとされる。

 加えて、「このほか党内部事業において提起される実務的問題(複数)を討議し、その執行を承認した」ことも伝えられた。

 金正恩は、以上の審議に基づき、「結論」として、「政務局メンバーが無限の責任性と献身性を発揮して・・党中央の決定を忠実に執行するための正しい事業方向と中心を維持し、・・すべての事業を党中央の思想と方針的要求に合うよう革命的に組織展開していくことについて強調」したとされる。

 以上の会議報道(とりわけ金正恩の「結論」)を通じて気になるのは、「党中央」が繰り返し強調されていることおよび聞きなれない「中心」との表現が用いられていることである。普通の意味で考えれば、政務局こそがまさに「党中央」を体現する存在とも言えるところ、そのメンバーが「無限の責任性と献身性」をもって従うべき「党中央」とは何を指すのか。もちろん、第一義的には、金正恩その人と考えるべきかもしれない。しかし、それが、これまで公開したことのない「政務局会議」を敢えて報道してまで強調すべきことなのか、やや釈然としない印象が残る。

 同会議に関し、もう一つ気になるのは、金与正の姿が見えないことである。彼女は副委員長ではないのだから「政務局」会議に出席すべき必然性はないとも言えるが、同じ「政治局候補委員・組織指導部第一副部長」の地位にある趙勇元が前述のとおり傍聴のような形で着席しているのであるから、その隣あたりに座っていてもよかったはずである。しかも、先般来の彼女の存在感強化の流れを勘案すると、今次会議における彼女の不存在は、むしろ不自然との印象を拭えない。

 ここから先は、大胆な想像・憶測の域に入るのだが、以上の疑問を解消する一つの仮説として、今次会議において、党中央委員会部署内における実務遂行に関しては、今後、金与正を「党中央」ないしそれに準じる「中心」として位置づけることが制度化された、と考えることはできないだろうか。この仮説が正しければ、会議で設置が検討された「党中央委員会の新たな部署」とは、それを裏付けるための、彼女を長とする部署(例えば、「総合調整室」といった)と考えることもできよう。また、報じられた会議参加者の中に彼女の姿がないのも、着席するに適当な位置がなかったからと考えることもできよう。金正恩の隣に座らせたのでは、余りにショッキングであるし、だからと言って、今後は「党中央」ないし「中心」とせよという人物を後ろの傍聴席に座らせるわけにもいかないからである。

 もちろん、この仮説の妥当性については、今後、慎重に検討すべきであり、拙速な断定は厳に慎むべきであることはいうまでもない。