rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

8月7日 金正恩黄海北道の洪水現場を視察

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩黄海北道銀波郡大清里(音訳)一帯の洪水被害状況を「現地で了解」したことを報じる記事を掲載。ただし、視察の日付や同行者などへの言及はなく、視察時の写真も付されていない。

 報道では、同地一帯では、最近の大雨のために堤防が決壊し、1階建て住宅730世帯と600余町歩に浸水し、179棟の住宅が損壊するなどの被害を受けたという(人命被害は事前避難によりなかった由)。

 金正恩は、洪水被害発生の報告を受けて同地を視察し、被害の復旧に向けた指示を下したという。報じられた主な指示内容等は、次のとおりである。

①政権機関・勤労団体・社会安全機関などの郡級指導機関が、住宅を失った住民に対し、公共施設の提供及び個人住宅への分宿などを進め、安定・慰労を図ること

②「国務委員長予備糧穀」を解除し、被害地域住民に供給すること

③党中央委員会部署と本部家族世帯が、被害住民の生活用品・医薬品などの必要物資を至急提供することを全面的に担当すること

④党中央委員会該当部署と人民武力相の幹部により被害復旧事業指揮部を組織し、同指揮部が現地の被害状況を了解の上、必要な資材・力量編制を策定・報告すること

⑤「中央の設計力量」を派遣し、被害地域の800世帯を「模範として新築」すべく、工事を早い期日内に最上級の水準で完了させること

⑥人民軍から必要な力量を編成・緊急派遣し、破壊された住宅・道路などの整理事業を先行させること

⑦被害復旧建設事業に必要なセメントをはじめとする資材保障のため、「国務委員長戦略予備分物資」を解除すること

⑧内閣、国家計画委員会、省、中央機関において、同地域の被害復旧に関する「党の意図」を正しく知り、積極的に協力することを訴え

 以上のような報道、とりわけ金正恩の諸般の指示内容の紹介が同人の被害住民に対する恩情をアピールするためのものであることはいうまでもないであろう。ただ、ここで指示されている事柄がすべて最高指導者の直接の指示によらないと実行されないとするなら、自然災害への対応において制度的な問題があるようにも感じられる。

 そういう中でも⑧だけが「訴えた」とされていることからは、金正恩が内閣に対し距離を置いた物言いをしているような印象を受ける。実際の指導権限を反映したものなのか、たまたまそのような表現になっただけなのか、関心がもたれる。