rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

8月10日 政論「人民の심부름군(使用人)」

 

 標記政論題目中の「심부름군」という言葉の意味は、辞書では「人の命により使いをする人」「使者」などとされていて、ここでの適当な日本語訳が思いつかないが、とりあえず、「使用人」とした。ただし、ニュアンスとしては、「使い走りをする人」、最近の俗な表現を借りれば「パシリ」に近いのではないだろうか。政論の趣旨は、党・政府などの幹部(일군)に対して、その職は、本来、前述のような意味での「人民の심부름군」であるとの自覚を持つよう訴えるものである。

 なお、そのような考え方は、幹部を指す表現として「일군」(本来は、主に肉体労働などの「働き手」という意味)という言葉が用いられていることにも共通する。北朝鮮体制にあっては、党・政府の役職は、かつての封建時代の役人のような上から人民を支配し、搾取する立場ではなく、人民に仕えることを本来的な責務とするものであるとの考え方である。もちろん、それは「大義名分」であって、現実は、封建時代さながらなのかもしれない。そうであるからこそ、改めて、このような「政論」が掲げられるのであろう。

 前置きが長くなったが、「政論」は、幹部に対し、「真の人民の使用人、滅私服務の闘士になれ!」とのスローガンを掲げて、その模範的事例などを縷々紹介・称賛している。要するに、このところの「滅私服務」キャンペーンに即したものであり、特段の新味はない。

 ただ、結びの部分の「滅私服務は、人民にいかなる力を及ぼすか」との問いかけに対する次の答は注目に値する。「情けを与えれば、血と汗を捧げるのが人民である」。非常に分かりやすい説明であるが、更に次のように敷衍している。「滅私服務は、広範な大衆をして朝鮮労働党に対する絶対的な信頼心をより深く堅持させ、一片丹心、党だけに付き従おうとの熱い熱望で党の周囲に一層鉄桶のように結集させる」。そのための「滅私奉公」なのである。