rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

8月14日 党中央委第7期第16回政治局会議開催

 

 標記会議が8月13日、金正恩の「司会」で開催されたことが報じられた。

 会議名称に「拡大」の表現は付されていないが、政治局メンバーに加えて、中央委員会メンバー、さらには党中央部署の副部長、内閣の副総理。相(大臣)、道党委員長、軍高官、中央非常防疫指揮部メンバーらが傍聴し、事実上、中央委員会全員会議と同規模の会議であった(報道写真で見ると、参加者は120~140人前後の模様)。

 議事内容は、①今次豪雨被害の復旧対策、②コロナ防疫対策、③党創建記念日準備、④党中央機構改編 ⑤組織問題(人事異動)に大別できる。

 このうち、最重要なテーマは①とみられる。まず、被害状況について、「農作物被害面積は3万9、296町歩、住宅1万6,680世帯と公共建物630余棟が破壊ないし浸水、道路・橋。鉄道の切断、発電所堤防の崩壊など人民経済諸部門に深刻な被害」が生じたことが示された。

 その上で、金正恩は、「洪水被害を一日も早く解消し、人民の生活を安着させるための部門別課題と方途的問題について具体的に提示」したとされる。そこで注目されるのは、「この機会に被害地域を人民の要求と志向、発達した時代的水準に合わせて新たに一新させ、・・・(洪水被害を再び受けないよう)適切な位置に質的に建設」するよう強調すると共に、「(コロナ感染症蔓延という国際情勢を勘案して)いかなる外部的支援も許容せず、国境をより鉄桶のように閉ざす」との方針を示したことである。前者については、先の金正恩の銀波郡視察の際の指示(模範となるよう復旧)を反映したものといえ、後者とあわせて、「我が制度の優越性を現実で改めて実証」しようとの狙いが込められていると考えられる。

 これを受けて、会議は、「(党創建記念日である)10月10日までに洪水被害復旧を基本的に終え、住民を安着させるための当面闘争課題を反映し、党中央委員会政治局決定書と党中央委員会・党中央軍事委員会・国務委員会の共同命令書」を示達することを提議したとされる。

 ②のコロナ対策に関しては、「国家的な整然とした防疫事業体系を立てるための機構的問題」を協議し、「新たに創設された機構が付与された権能を正しく行使し、責任性と役割を高める」ことなどを指摘するとともに、「開城市をはじめとした前沿地域封鎖を専門防疫機関の科学的な検証と担保にしたがって解除することを決定した」とされる。

 ③については、10月10日の党創建75周年記念日に向けた「国家行事準備事業の進捗状況に対する報告を聴取」し、「すべての慶祝行事を最上の水準で」実施できるよう「該当する対策を求めた」とされる。

 また、④については、党中央委員会に「新設部署を設ける」ことを審議決定し、「その職能と役割と提示した」とされる。部署の具体的名称などは示されていないが、「新設部署が国家と人民の尊厳と利益を守護し、社会の政治的安全と秩序を頼もしく維持担保し、我々の階級陣地、社会主義建設を鉄桶のように保衛していく上で大きな寄与をする」との期待が示されていることから、治安。安全部門を統括する部署(かつての行政部に類似か?)と推測される。

 最後の⑤では、大幅な人事異動が行われた。まず、金徳訓党副委員長・部長が内閣総理に任じられた。同人は、もともと経済部門の経歴が長く副総理の経験もある。前任の金才竜は、それと入れ替えの形で党副委員長・部長(具体的名称不詳だが経済全般を担当か)に任じられた。やや左遷の印象も否めない。

 また、この金徳訓と李炳鉄(党副委員長・軍需工業部長、中央軍事委副委員長)が政治局常務委員会委員に昇格した。この結果、常務委員会メンバーは、金正恩・崔龍海・朴奉柱の3人体制から5人体制へと拡幅されたことになる。

 更に、政治局委員に朴泰徳が、同候補委員に朴明順、全光浩が昇格、この3人と金勇帥が党部長に任じられた。このうち、朴泰徳は、2月の政治局会議で「官僚主義」を批判されて政治局委員、党副委員長・農業部長の職を解任されていたもので、完全復活が許されたことになる(同時に党副委員長にも就任)。なお今回、中央委員にも選出とされていることから、これまで、その地位もはく奪されていたことがうかがえる。ちなみに同じ会議で同様に副委員長を解任された李萬建は、政治局委員の地位は維持しており、処遇が異なる点が注目される。朴泰徳は本人の行動、李萬建は監督責任を問われたとも考えられる。朴明順(女性)は、かねて軽工業部副部長として知られており、おそらく同部部長に昇格したのであろう。また、全光浩は、これまで内閣副総理を務めてきたが科学・教育関係の経歴があり、今後は党においてそれら部門を担当していくと考えられる(おそらく科学・教育部長)。金勇帥は、かつて財政経理部長を務めたが、副部長に降格され、最近では同部第一副部長とされていることから、同部部長に返り咲いたものと考えられる。

 このほか、地方関係では、南浦市党委員長に李在南(音訳・新義州市党委員長)が、咸鏡北道党委員長に金鉄三(音訳・南浦市党委員長)がそれぞれ任じられた。共に、貿易窓口を抱える都市の責任者であり、コロナ防疫対策の論功を評価された可能性も考えられる。

 本ブログでも繰り返し指摘してきたが、これまで豪雨被害に対する対応は、その規模に比するとやや手薄な印象があったが(コロナ防疫対策が強調された余りか?)、今次政治局会議を契機に、その復旧への取組みに拍車が掛けられることになろう。ただし、それは、コロナ対策の水準低下を意味するものではなく、あくまでも、「(コロナと水害という)二つの危機を同時に克服」することを目指していくものと考えられる。