rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

9月9日 党中央軍事委第7期第6回拡大会議開催

 

 標記会議が9月8日午前、「台風9号により咸鏡南道剣徳地区において多くの被害が発生したことと関連して」開催され、「国家的な被害復旧対策を討議した」ことが報じられた。会議は、金正恩が「指導」したとされ、中央軍事委メンバーのほか、党副委員長、党中央主要部署幹部、内閣・省・中央機関メンバー、武力機関指揮メンバー、洪水被害復旧中央指揮部メンバー」が参加したという。

 会議では、金正恩が「深刻な被害を受けた剣徳地区の状況(住宅被害だけでも2,000余世帯)を詳細に通報」するとともに、その結果、「(従前)国家的に推進してきた年末闘争課題を全面的に考慮し、闘争方向を変更せざるを得ない状況に直面するに至った」ことを明らかにした。

 その上で、今後の対応方針として、「10月10日(の党創建記念日)までに住宅、道路、鉄道を復旧、年末までにすべての被害を100%無くすことのできる国家的な非常対策」の必要性を訴え、そのための「復旧建設を再び人民軍隊に委任する」との方針を示した。

 これに基づき、会議では、「剣徳地区に派遣する人民軍部隊の力量編制と復旧建設任務、輪転機械と建設機材の保障及び機動対策、セメントと燃油をはじめとした建設資材保障対策、連帯輸送対策などを規定し、剣徳地区復旧指揮組を組織」し、関連の「党中央軍事委員会命令書」に金正恩が「親筆署名」したとされる。

 以上のような報道内容から見ると、同会議は、軍を復旧活動の主力として動員したことから「中央軍事委員会」の形式をとったものの、実質的には、党・政・軍の主要幹部を集めた一種の「合同会議」的な性格のものであったと考えられる。

 ただ、疑問なのは、剣徳地区の被害が「台風9号による」ものとされていることで、そうであれば、5日に咸鏡南道で開催された党政務局会議の際、金正恩が「(先行して派遣していた)副委員長達から現地で了掌握した台風被害状況について詳細に報告を受け」、復旧対策を講じた際には、この問題は含まれていなかったのかということである。同会議では、金正恩が軍の復旧活動への動員に関する「党中央軍事委員会命令を下達」したことも報じられていたのである。

 あるいは、5日の時点では、剣徳地区の被害が正確に把握されていなかったのかもしれない。この時伝えられた被害は、咸鏡南北道の「海岸沿線地帯で1,000余の住宅がそれぞれ破壊され、少なくない公共建物と農耕地が浸水した」ことだけであったからである。そうだとすると、同地区を担当した副委員長は、何を「了解」し、報告したのかということにもなりかねない気がする。

 いずれにせよ、度重なる台風被害などを受けて、「年末闘争課題を全面的に考慮し、闘争方向を変更せざるを得ない状況」が生じているわけで、今次会議は、これについて、指導部内で認識を共有し、今後の対応方針についての意思統一を図るものであったと考えられる。また、そういったことのために、こうした会議をわざわざ開催するところが最近の金正恩の政治スタイルの特徴といえよう。