rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

9月26日 災害復旧関連報道まとめ

 

 標記に関連した記事は、毎日掲載されているが日々同じような内容の繰り返しであるのでしばらく取り上げなかった。本日掲載の記事も格別新味があるわけではないが、簡略に整理しておきたい。

 まず、被災地における動向については、「党創建75周年が近づいてくる、一日一日を価値ある偉勲と誇らしい労力的成果で輝かそう」との共通題目下、各地域の状況が報じられている。その中で注目されるのは、「剣徳地区鉄路復旧基本的に結束、列車輸送開始」と題する記事である。人民軍部隊による、台風で流失したとされる剣徳地区と端川市を結ぶ鉄道(距離は「約200里」とされているから、概ね80キロ程度か)の復旧とそれを利用した被災物資等の輸送再開を伝えるものである。これで、剣徳地区の復旧工事は、随分と加速されるのではないだろうか。

 一方、首都党員師団については、咸鏡北道に進出した第2首都党員師団についての「復旧戦闘も生活も革命的に」と題する記事と咸鏡南道に進出した第1首都党員師団に関する「創造的で進取的な働きぶりを発揮して」と題する記事が掲載されている。ただし両記事の内容は対照的で、前者は、標題に示されるように「革命的」態度が主に取り上げられていて、「復旧戦闘」成果については具体性を欠いている。辛うじて住宅建設の外装段階に至っているとの記述はあるが、その位置・規模などは言及されていない。咸鏡北道の復旧が相変わらず難航していることがうかがわれる。後者については、部隊ごとの配置先や進捗状況などが具体的に紹介されており、咸鏡南道では、それなりの成果が収められていると考えられる。

 このほか、「仕上げ段階工事を力強く推進 黄海北道内の被害復旧戦闘場において」との記事も、同道内各地の復旧成果を伝えている。

 また、以上とは別に、被災地における復旧活動に対する物資供給などの動きについて、「最精鋭首都党員師団戦闘員たちと心も歩みも共にして」との共通題目の下、主に平壌市内における諸部門の動向を伝える記事もいくつか掲載されている。

 以上のような報道振り(最近、類似の内容が継続)からは、北朝鮮各地で災害復旧への取組みに力が注がれている中で、その進捗状況にばらつきがみられること、具体的には、南部の平野が多い地方(特に復旧のモデル的に取り上げられている地区)では比較的取り組みが進捗している一方、咸鏡北道では苦戦が続いていることがうかがわれる。また、それ以外、局所的には、報道ではあまり紹介されないまま、いわば見捨てられている地区が存在する可能性もあろう。

 最近、一部の報道や研究機関などは、かねて制裁とコロナで苦しんでいた北朝鮮が打ち続いた自然災害で息の根を止められたかのような見方・分析を示している。しかし、そこまで言うのは、常識を超えた「平壌時間」の中で復旧が最大スピードで進んでおり日々奇跡が創造されているという北朝鮮報道と逆の意味で、過剰なものなのではないだろうか。そこには、そうした北朝鮮の窮状をアピールすることで、対北朝鮮支援の必要性を訴えたいといった思惑が働いていると見るのはうがちすぎであろうか。

 いずれにせよ、復旧活動についての北朝鮮指導部のとりあえずの評価が2週間後(党創建記念日の10月10日)には示されるであろう。もちろん、それは宣伝的なものであろうが、それにせよ、余りに現実と乖離したもの(例えば、被災者の多数が住宅を再建できていないにもかかわらず、「ほぼ完成」と発表など)であれば、むしろ住民の反発を招くだけであり、最近の「親現実的」との宣伝方針にもそぐわないものになる。そのような前提を踏まえても、北朝鮮は、党創建記念日を「輝かしく迎えた」と発表できるのではないかと考えている。