rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

10月12日 閲兵式参加部隊・指揮官まとめ

 

 10日実施の閲兵式に関し、参加部隊名及びその指揮官の名前が報じられているので、これを整理してみた。なお、以下は、「労働新聞」の報道に基づくものである。朝鮮中央放送の録画映像でのナレーションでは、更に詳しく述べているようだが、正確に聞き取れないので、残念ながら、それは含めていない(ただし、下線部は、同放送に基づく聯合通信本日付け記事による)。なお、こうした部隊名・指揮官名の公表はぶりを過去に比較すると、随分と情報公開を進めているといえる。これも金正恩時代の一つの特徴といえよう。

 

閲兵式参加部隊

名誉騎兵中隊

徒歩部隊 

 党中央委員会護衛処縦隊:한순철上将(20・5・23上将昇進)

 国務委員会警衛局縦隊: 김철규上将(2018当時「護衛司令部副司令官」

 護衛局縦隊: 김용호中将

 護衛司令部縦隊: 곽창식上将(2019・12から現職)

 第1軍団縦隊:박수일上将(2018当時、第1副総参謀長兼作戦総局長)

 第2軍団縦隊:최두용上将(20・5・23上将昇進)

 第4軍団縦隊:박광주上将(20・10・5上将昇進)

 第5軍団縦隊:리태섭上将(前「第7軍団長・中将」)

 海軍縦隊:김명식海軍大将(2017~現職。19・4大将昇進)

 空軍縦隊:김광혁空軍大将

 戦略軍縦隊:김정길上将(20・5・23上将昇進)

 狙撃兵縦隊

 軽歩兵縦隊

 最前線軍団縦隊(複数)

 タンク装甲師団縦隊(近衛ソウル柳京洙第105タンク師団縦隊を先頭)

 機械化歩兵師団縦隊

 専門兵縦隊

 社会安全武装機動部隊縦隊

 金正日軍政大学縦隊(最高級軍事指揮官養成の中心基地)

 金日成軍事総合大学縦隊

 金日成政治大学縦隊

 金正恩国防総合大学縦隊(国防科学技術人材を輩出)

 朝鮮人民軍、社会安全軍各級軍事学校縦隊

 革命学院縦隊(万景台革命学院、南浦革命学院、康盤石革命学院)

 労農赤衛軍縦隊

 赤い青年近衛隊縦隊

 航空機部隊(先頭は護衛飛行中隊)

 機械化縦隊

 装甲車縦隊

 主力タンク縦隊:김주삼中将(20・5・23中将昇進、6・7党中央委候補委員)

 砲兵部隊

ロケット縦隊

 大陸間弾道ロケット赤旗第1中隊縦隊(2017・11・29宇宙に轟かす):장창하上将

 核戦略武力:김정식上将(20・10・5上将昇進)

 

 参加部隊に関し注目されるのは、まず、先頭に金正恩ないし党中央の防護に当たる4個の部隊が登場したことである。この種部隊の名称、指揮官の名前等が報じられるのは極めて異例である。7月の戦勝記念日に際し、金正恩が軍主要指揮官に記念拳銃を授与した際、「護衛司令官、護衛局長、護衛処長」の3者が並記されていた理由がここで明らかになった。彼らは、それぞれ金正恩に直属しているのであろう。

 また、世間的には余り注目されていないが、個人的には、社会安全武装機動部隊に着目したい。いわゆるSWAT部隊のような装備で、日本の機動隊的な任務も兼ねているのではないだろうか。社会的な騒擾事態などが発生した場合に、このような部隊が対応すれば、軍の過剰対応が契機となって事態拡大を招いた「光州事件」のような事態を避けることが可能になる。北朝鮮の体制の安定性を考える上で、重要な意義を持つ部隊と考える。

 名前を報じられた指揮官に関して言えることは、最近昇進した者が多いということである。軍事部門においても、金正恩による人事掌握が着々と進められていることが改めて感じられる。

 なお、ロケット部隊を率いた장창하上将 김정식上将については、ミサイル試射に際ししばしば名前が報じられる、北朝鮮ミサイル開発の立役者といえる人物であり、前者は国防科学院長、後者は党軍需工業部副部長とされている。したがって、もし彼らが現在もその職にあるとするなら、それはすなわち、今次パレードに初登場した新型大陸間弾道ミサイルがいまだ軍部隊に引き渡されておらず、依然として開発部門の管理下にあることを強く示唆するものと言える。ただし、そのことが、これら兵器がいまだ開発段階にあると判断するのは留保の必要があろう。これら兵器については、その特殊性から開発完了後も党傘下の特殊な部隊が管理・運用している可能性も否定できないからである。