rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

10月16日 評論「80日戦闘の闘争目標」

 

 標記評論は、「80日戦闘」の取組み課題を具体的に示したもの。

 第一にあげられているのは、「国家非常防疫事業をより強化し、防疫前線を鉄桶のように堅持すること」である。

 第二にあげられるのが「人民の苦痛を消し去る被害復旧戦闘を年末までに必ずや完了すること」である。

 第三として、「農業部門において、今年の農事をしっかり結束し、翌年の農事の準備に力量を集中すること」があげられている。ちなみに、今年の穀物生産については、「自然災害を受けた当時には予測できなかった良い作況がもたらされ、(これまでの)最高収穫年度に劣らない穀物産出を期待できるようになった」として、楽観的な見通しを示していることが注目される。

 最後に上げられているのが「今年に計画された国家的な重要対象建設を積極的に推進し、人民経済すべての部門で国家経済発展5カ年戦略遂行を年末まで最大限推進すること」である。ここでは「今年に計画された国家的な重要建設対象」について具体的な言及はないが、思いつくままに上げてみると、元山カルマ海岸観光地区建設、三池渕市整備(第3段階)、平壌総合病院建設、炭素ハナ化学工業、光川ニワトリ工場(金正恩が7月下旬現地指導)などがあろう。このうち最初の2か所は、建設を担当していた部隊が災害復旧に転用されているので、年内の完成は難しいと思われる。平壌総合病院は、建物自体は概成しているようだが、問題は医療機器であろう。すべて国産のもので済ませることにすれば、何とか間に合わせることも可能ではないか。炭素ハナ化学工業は、実態不明なので予測しがたいが、ニワトリ工場くらいは、金正恩の面子を守るためにも何とか完工させるのではないだろうか。一方、「国家経済発展5カ年戦略」については、「最大限」ということで、やれるだけやるということであろう。

 結局のところ、「80日戦闘」は、最終的に「成功」と評価しうるような形で「課題」を設定しているようにもみえる。換言すると、「80日戦闘」は、「5カ年戦略」の目標は未達成であったとしても、第8回党大会を「勝利者の大会」として開催するためのものということもできよう。

 なお、冒頭にあげられた「防疫事業強化」に関連して、北朝鮮におけるコロナ蔓延の状況について付言しておくと、少なくとも現時点においては、患者はほぼゼロとみなすことができると考える。その根拠は、党創建記念日(10月10日)関連の行事において、大人数がマスク未着用のまま密集し、しかも喊声をあげるといった状況が少なからず見受けられたことである。とりわけ印象的であったのは、金正恩が閲兵式参加者及びそれを観覧した全国各地からの慶祝代表らとそれぞれ記念写真を撮影した際(いずれも11日)のことで、新聞に掲載された写真だけ見ても分からなかったが、ニュース映像によると、金正恩に至近の距離で参加者が押し合いへし合いしながら大歓声をあげている。仮に国内で感染が確認されているのであれば、金正恩の安全確保を最優先する当局がこのような状況は絶対に許容しないであろう。また、閲兵式に参加した将兵、慶祝代表らの帰郷により、今頃は全国で爆発的に蔓延しているであろう。そういうおそれがないことを知っているからこそ、このような行事の運営形式を選択したのであろう。