rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

10月22日 中国人民志願軍参戦70周年関連活動

 

 本日の「労働新聞」には、標記に関するいくつかの記事が掲載されている。

 まず、金正恩平安南道北倉郡にある中国人民志願軍烈士陵園を訪れ、花輪を捧げるなどして敬意を表したことが報じられた(日付への言及はなし)。これには、党政治局常務委員会メンバーである崔竜海、李炳哲、金徳訓及び政治局メンバーである朴正天(軍総参謀長)、金在龍(党副委員長)、李日愌(同)、金衝俊(党国際部長)のほか外相、海・空軍の司令官らが参加した。

 そして、金正恩が同地において、「(中国人民志願軍が)参戦したときから70年という歳月が流れたが、極めて厳しい状況の中でも抗米援朝保家衛国の旗印の下我々を犠牲的に支持声援した中国人民志願軍の不滅の功績と英雄的偉勲は我が人民の記憶の中に生き生きと残っている。・・中国人民志願軍の朝鮮戦線参戦は、祖国解放戦争の偉大な勝利に歴史的寄与をした」「朝中二国の軍隊と人民が自分の運命を一つに連結させ生死苦楽を共にしつつ血で勝ち取った偉大な勝利は、歳月が流れ世紀が変り今日に至っても変わることなく実に巨大な持つ」などと述べたとしている。

 また、金正恩は、平壌市内所在の中国人民志願軍犠牲者慰霊施設である「友誼塔」にも花輪を送り、21日に行われたその進呈式には、朴奉柱常務委員・党副委員長及び政治局メンバーである金守吉(軍総政治局長)、太炯哲(最高人民会議常任委員会副委員長)、李龍男(内閣副総理)、金英愌(党平壌市委員会委員長)らが参列したとされる。

 一方、中国からも前記2施設に対し、それぞれ習近平、党中央委員会などからの花輪が送られ、駐朝中国大使及び同大使館職員、華僑ら出席の下、いずれも21日、両地で進呈式が行われたことを報じている。

 以上のような活動について、一般には、北朝鮮が内外情勢厳しい中、中国との連帯の確認強化を目指したものとの見方が多いようである。確かに、金正恩の前掲のような「発言」(報道用のものであろうが)の内容は、それなりに礼を尽くしたものといえなくはない。また、行事への参加者を見ても金正恩はじめ5人の党常務委員会メンバーの全員、8人の政治局メンバーを動員しており、中国側への配慮がうかがわれる。

 しかし、北朝鮮が本当に「中朝が共同して米帝と戦った」ことに脚光を当て、更なる関係強化の契機とすることを望んでいるとするならば、「中国人民志願軍の参戦70周年」という格好の機会をこれだけで終わらせるのは、もったいないようにも思われる。代表団の交換などはコロナ禍の為に困難であるとしても、例えば、記念集会・行事の開催や「労働新聞」への記念論説ないし関連記事の掲載などを通じて、「朝中連帯」をアピールすることはいくらでもできたはずであるが、これまでのところそのような活動は報じられていない。

 そして、これは牽強付会な見方かもしれないが、今日の「労働新聞」には、「黄砂に対処した防疫措置を徹底して」と題する評論が掲載されている。同評論は、「今日、黄砂が我が国の全般的地域に影響を及ぼすと予見されることと関連して、在り得る被害を徹底して防ぐことは、防疫戦線を鉄桶のように堅持するための焦眉の課題」であるとする。その理由は、「空気などによっても悪性ウイルスが伝播され得るとの資料に照らしてみるとき、黄砂現象に覚醒して対応し、徹底した対策をとる必要性」があるというもので、具体的には、「野外活動を避け、不必要に外出する現象が絶対にないようにする」ことのみならず、「すべての機関と家庭では、窓と出入り口を徹底して閉め、ほこりが内部に入らないよう具体的な対策」まで要求している。これを中国からの思想的悪影響を防止せよとの隠喩と解釈するのは考え過ぎであろうが、まさに参戦記念日のこの日にこのような評論が掲載されるのが偶然であるのか否かは一考の余地があるのではないだろうか。