rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

10月25日 社説「中国人民志願軍烈士の偉勲は朝中親善の歴史と共に長く輝くであろう」

 

 標記社説は、本日が中国人民志願軍の朝鮮戦争参戦75周年記念日にあたることを受けて掲載されたものである。

 社説は、同参戦の意義を高く評価するとともに、金日成金正日両人の中朝友好への尽力に言及した上で、今日の両国関係について「歴史のあらゆる挑戦と試練を克服し固く確かめられた朝中親善は、今日、敬愛する最高指導者金正恩同志と習近平総書記同志の間の厚い親密な関係によって新たな時代の要求に即してより高い段階へと昇華発展している」、「朝中親善は、古今東西に例がない特別な関係に、何をもってしても破ることのできない不敗の親善へと強化発展された」などと主張し、更に、「(中国との)親善と団結の威力で社会主義偉業を活気をもって前進させていこうというのは、我が党と人民の確固不動の意志である」として、それを堅持するとの姿勢をアピールしている。

 更に、本日の「労働新聞」は、同社説に加えて、「朝中親善の年代記に刻まれた兄弟的友誼と戦闘的団結の歴史は不滅である」との共通題目の下、「中国人民志願軍勇士たちが発揮した高潔な犠牲精神」と題する評論及び「今日も輝く有志達の偉勲」「生死苦楽を共にした日々」などと題する3件の回想記事を掲載している。

 以上のような社説、記事の掲載は、金正恩の中国人民志願軍烈士陵園への訪問・表敬及び「友誼塔」への花輪進呈などの活動(22日報道)とあわせて、中国との友好関係を確認・増進することを目指したものであろう。22日の報道を紹介した本ブログで、関連論説・回想記事などがあってしかるべきと記したのは時期尚早であって、それらは記念日である本日にしっかり掲載されたわけである。あるいは、その他の記念行事なども本日実施され、明日報道されるのかもしれない。したがって、この記念日を対中関係緊密化の契機として最大限活用しようとの北朝鮮の意図に疑いの余地はない。

 しかし、それでもなお留意されるべきは、前掲社説の中で、朝中の戦いを「帝国主義連合勢力に反対する共同闘争」と形容して、「米帝」への直接的な言及が見られないことである(しいて言えば。中国の参戦時の「抗米援朝保家衛国」とのスローガンに言及)。ここからは、北朝鮮が対米関係にはなお慎重な配慮を残していることがうかがわれる。

 また、社説が中国人民志願軍の参戦について記述するだけでなく、それに先立ち「我が人民は中国人民が国内革命戦争において困難を経た時、自分のことのようにみなして惜しみなく支援を与えた。数多くの朝鮮の息子・娘たちが中国の戦区で血を流し命を捧げて国内革命戦争が勤労人民の勝利で終わるようにする上で大きく寄与した」ことも並記し、両国の関係を中国からの一方的支援としてではなく、あくまでも相互の助け合いとして描写していることも注目される。

 米朝交渉が暗礁に乗り上げたままトランプ(第1期?)政権が終わりを迎え、米中対立がますます深まりつつあるとの昨今の情勢を受けて、北朝鮮が当面、中国との友好関係を外交の基調としようとしていることは間違いないであろうが、そのような中でも、北朝鮮の対中姿勢には、なにか一筋縄では理解できない微妙なものが存在するように思われる。中朝関係は、まさにそのような意味で、「古今東西に例がない特別な関係」と言うべきであろう。