rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

10月30日 「閲兵式」への国際社会の反響を紹介

 

 本日の「労働新聞」は、去る10月10日に実施した党創建75周年慶祝閲兵式に対する国外の反響を紹介する長大な記事を掲載している。もちろん、それは、北朝鮮自身がこう伝えてほしい、こう評価してほしいと欲するところと合致したものだけを選択した(あるいは作り上げた)ものであろう。しかし、そうであるからこそ、ここに紹介された「反響」は、北朝鮮が同閲兵式を通じて何を訴えたかったのかを端的にうかがわせるものであるといえる。そのような意味で、「『朝鮮の特大型閲兵式』『偉大な朝鮮労働党に栄光を!』 党創建75周年慶祝閲兵式に対する国際社会の大きな反響」と題する記事を紹介する(したがって、記事内容が真実であるかはここでは問題にしない)。

 同記事は、二つの小見出しから構成されている。最初の小見出しは、「誰も敢えて朝鮮を見くびることができないということを示威した閲兵式」というもので、そこでは主に登場した軍備とりわけミサイルに焦点が当てられている。例えば、「パキスタンの新聞」が「(金正恩が)いかなる軍事的脅威も充分に統制管理することができる抑制力を備えたと述べつつ、万一いかなる勢力であれ朝鮮に向けて軍事力を使用しようとするなら最も強力な攻撃的な力を先制的に総動員して懲罰するであろうと明らかにされた」ことを報じたこと、「ロシア連邦共産党サハリン支部インターネット・ホームページ」が「閲兵式場を通過した最先端武器は、その方(金正恩)の宣言がどれだけ重みのあるものかをはっきりと実証したとの内容の文を掲載した」こと、「(各国の)分析家達は、閲兵式最後に登場したミサイルを史上最大規模のミサイルと評価している」こと、「米国のCNN放送」が「北朝鮮労働党創建75周年慶祝閲兵式で世界最大の弾道ミサイル中の一つとみなしうるものを公開した」と報道したこと、などが紹介されている。

 もう一つの小見出しは、「真情が盛り込まれ人情味があふれる歴史的に稀な演説」というもので、そこでは、金正恩演説の民生関連への言及に焦点があてられている。例えば、「金正恩領導者の演説は、余りにも感動的で涙なしには聞くことができない」「人民を空のようにみなされる金正恩委員長の演説は、真実の感情と心を盛り込んだもので、その方の風貌を示している」などの声や「中国民族大学の一教授」が「このような真情が溢れ、血と熱があり、人情味に溢れた演説は、まさに歴史に稀なものであり、人々を無限に感動させる。我々のような外国人もこのように激情の涙を流すのであるから、朝鮮人民がどれだけ感動したかは、想像するに難くないであろう」と述べたこと、「民主コンゴ共産党総秘書」が「心の中の真情は『ありがとうございます!』、この一言だけであるとの(金正恩の)演説は、朝鮮人民すべてを泣かせ、全世界を感動させた」としていること、「スロバキア共産党のインターネット・ホームページ」が「このように老若男女皆が自分の領導者を絶対的に信頼し党を熱烈に支持し付き従う国が(北朝鮮以外の)どこにまたあるだろうか」と記していること、などを紹介している。

 以上のような同記事の構成からすると、同閲兵式における金正恩演説における人民への謝意や自責の念の表明などは、新型ミサイルなどを通じた軍事力整備の誇示に匹敵するハイライトとして位置付けられていると考えられる。であるなら、あの声涙ともに下る演説は、そのための練りに練った演出であったのであろうか。そうだとしても、それだけの演出を存分に果たした金正恩の力量については、政治家には大衆に訴えるコミュニケーション力が必要という意味で、高く評価せざるを得ないであろう。