rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月16日 党中央委第7期第20回政治局拡大会議を開催

 

 標記会議が15日、金正恩の「司会」の下、開催されたことが報じられた。「拡大会議」とされているのは、「党中央委員会該当部署幹部と道党委員長たち、社会安全相と中央検察所長、国家非常防疫部門メンバーたちが画像会議体系で傍聴した」ためであろう。

 報じられている会議内容は2件あり、一つ目は、「国家非常防疫体系をより補強する問題」である。金正恩が「最近の世界的な悪性ウイルス伝播状況の深刻性と国家防疫実態について詳細に分析評価」した上で、「超緊張状態を引き続き堅持し、完璧な封鎖障壁を構築して非常防疫戦をより強く展開」するよう強調したという。

 二点目は、「教育機関(複数)と社会全般において現れている非社会主義的行為」についてであり、これを「分析した資料が通報され、これを決定的に根こそぎにするための問題が深刻に論議された」という。これに関しては、とりわけ「厳重な形態の犯罪行為を敢行した平壌医科大学党委員会」とその「犯罪を庇護、黙認、助長した党中央委員会の該当部署(複数)、司法検察、安全保衛機関(複数)の無責任性と極端な職務怠慢行為が厳しく批判された」。そして、「各級党組織を再度覚醒させ、反党的、反人民的、反社会主義的行為を根こそぎにするための全党的な闘争」の強化と「法機関(複数)において法的闘争の度数を高め、社会政治経済道徳生活全般において社会主義的美風を徹底して固守」することが強調されたという。

 同報道は、会議が「上程された議題を深く研究討議」し、「該当の決定を全員一致で採択した」と結んでいる。

 上記のうち、一つ目のコロナ防疫問題に関連しては、同日、「非常防疫戦勝利すなわち80日戦闘の勝利である。防疫事業に総力を!」との共通題目の下で掲載された「祖国保衛、人民保衛の決死戦」と題する評論が、国際的な感染者数について、発生から1000万人が感染するまで6か月かかったが、1000万名から2,000万名までは43日間、3、000万人までは38日間、4,000万人までは32日間、5,000万人までは20日と拡大が加速度的に増加していることを指摘して、「刻一刻とより大きな災難を招来している悪性伝染病との戦場は、千万回中ただ1回の失敗も、瞬間の弛緩も絶対に容認されない祖国保衛、人民保衛の最前線」であると強調している。今次政治局会議において改めて同問題が取り上げられたのも、このような危機認識によるものと考えられる。

 二点目の平壌医科大学党委の「犯罪行為」については、具体的な説明はないが、それをもって「一罰百戒」的に社会全般における「非社会主義的行為」の蔓延に歯止めをかける契機とするために敢えて取り上げたものとみられる。「反党的、反人民的」などの表現も用いられているが、体制・指導部に対する直接的な批判・反対活動的なものがあったというよりは、かねて指摘されてきた権力乱用型の不正腐敗行為ないし資本主義文化への傾倒(韓国製ドラマの視聴など)が甚だしい形で行われていたにもかかわらず放置されていたことから、関係機関の緊張を促し、対策の強化を図ったものと考えられる。

 社会安全、検察などの治安機関の統制強化のためには、先般、党中央に部署が設置されたはずであるが、その矢先にこのような事態が起きては、同部の部長(誰が就任したのかは未確認)は、面目丸つぶれどころか地位も危ういのではないだろうか。いずれにせよ、これを契機として、改めて非社会主義・反社会主義的現象への批判・闘争の強化が図られることになり、また、次回党大会においても、それが一つの課題として取り上げられる可能性もあるのではないだろうか。

 今次会議に関して最後に指摘しておきたい点は、コロナ防疫問題を除いては現在取組み中の「80日戦闘」の進捗状況、促進策などが取り上げられていないことである。むしろ、それこそが目下の最大の課題ではないかとも思われるのだが、その理由は定かでない。それらについては、いずれ改めて別途の会議が予定されているのかもしれない。