rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月25日 「科学的打算」と「思想攻勢」(加筆版)

 

 本日の「労働新聞」は、「党の思想貫徹戦、党政策擁衛戦の火の手高く80日戦闘の1日1日を忠誠と偉勲で輝かせよう」との共通題目の下、成果獲得の要諦として、それぞれ「科学的打算」と「思想攻勢」を強調する論説及び記事を掲載しており、興味深い。いわば好対照をなすともいえるこれら論説・記事の骨子を紹介したい。

 前者は、「科学的打算に基づいた作戦と指揮が成果をもたらす」と題する論説であり、「今日の現実は、すべての単位において新たな変革を成し遂げることを要求している」とした上で、「そこで提起される第一の問題は、現実性と可能性に立脚して目標と計画を科学的に立てることである。実現不可能な目標と計画は帳面の上の記録として残り、革新ではなく沈滞と不信をもたらし、後には大衆の熱意を低下させる否定的後遺を招来することになる。主客観的条件を具体的に反映し、科学性と可能性が保障された実質のある動員的な目標と計画だけが実践へとつながることができる」と主張する。

 また、「経験は、与えられた条件と環境、力量と手段を最大限効果的に利用するための綿密な計画を立て、そこに科学的な指導を伴わせるとき、応分の結実をなすことができるということを示している」「戦闘目標は、決してスローガンを叫んで、決意や誓いをしたからといって自ずと遂行されるものではない」などとも主張し、徹底して客観的合理性に基づく計画の策定と推進の重要性・不可欠性を強調している。

 一方、後者は、「総攻撃戦へと鼓舞推動する強力な思想攻勢 人民経済主要部門党組織において」と題する記事であり、「人民経済主要部門党組織においては、80日戦闘期間、幹部と党員と勤労者の精神力を総爆発させるための宣伝扇動攻勢を強力に展開して成果を収めている」として、主要企業所などの取組みの実例を紹介している。

 例えば、記事冒頭に上げられている金策製鉄連合企業所においては、「企業所構内と生産現場に80日戦闘と関連したスローガンと標語、宣伝画を新たに掲示し、放送宣伝車と音響増幅機材を利用して忠誠の突撃戦、熾烈な徹夜戦、果敢な電撃戦により80日戦闘において偉勲を創造しようとの内容の放送編集物を集中的に送り出すことによって、戦闘雰囲気を高潮させるようにした」ことを紹介している。このほか「大型速報板を通じて、連合企業所の生産成果と従業員の中で発揮された素行資料(模範的事例)を機動的に紹介宣伝」する活動なども行われているという。

 このような取組みは、災害復旧状況を報じるテレビニュースなどでも、建設現場の近くで歌を歌ったり楽器を演奏したり、あるいは旗を振ったりする宣伝小組員の姿が必ずと言ってよいほどしばしば(場合によっては、建設活動そのものよりも多く)画面に登場ずることからも、北朝鮮においては、勤労意欲向上の必須の要素と考えられていることがうかがえる。第三者的には、その効果には大いに疑問を感じるのだが、北朝鮮の人にしてみると、習慣化しているために、それがないと調子が出ないのであろうか。

 前述の二つの要素は、一見矛盾するもののようにも見えるが、北朝鮮においては、いわば車の両輪のように、両者が相伴うことによって、成果を保障することができると考えられているのかもしれない。

(以下加筆部分) 

 ちなみに話題は変わるが、前掲論説は、「我が党は、80日戦闘期間に国家経済発展5か年戦略遂行において未達成の課題を最大限遂行することを要求している」としていたが、それに関連して、同じ共通題目の下で掲載された「自力更生、堅忍不抜の精神でもたらした誇らしい結実 祥原セメント連合企業所で5か年戦略目標完遂」と題する記事は、同企業所において、「年間セメント生産計画を前倒しして完遂したのに続き、去る21日までに国家経済発展5か年戦略目標を成果裡に占領した」ことを報じている。

 「5か年戦略」に基づく目標達成については、11月13日に勝利湖セメント工場が「去る2日までに国家経済発展5カ年戦略目標を完遂した」ことが報じられていたが(同日付け本ブログ参照)、今次報道のような大規模な連合企業所クラスの「達成報道」は、初めてのことと思われる。セメント部門は、他部門に比較すると順調ということであろうか。