rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月25日 「80日戦闘」成果続報

 

 昨日の本ブログで台風被害を受けた端川地区の成果報道を紹介したが、今日の「労働新聞」は、まさに、その最大の被災地と目される剣徳地区における成果を報じている。

 すなわち「党第8回大会を高い政治的熱意と輝かしい労力的成果で迎えよう」との共通題目の下、「生産的昂揚を起こし80日戦闘目標を続けて完遂」と題して掲載された記事の中で、「剣徳鉱業連合企業所において、80日戦闘目標に反映された鉛、亜鉛鉱物生産計画を遂行した」ことが報じられている。

 剣徳地区は、北朝鮮有数の鉱業基地であるだけに、9月の台風被害に際してわざわざ党中央軍事委員会を開催して被害復旧のための軍部隊投入を決定し、その後、金正恩自ら足を運んで復旧活動を慰労・指導した場所である。鉛、亜鉛は、同地区の主力産品であり、その生産目標が遂行されたということは、同地区の修復が基本的に完成したことをうかがわせるものであり、経済的のみならず政治的にも大きな意味を持つ成果といえよう。

 ただし、同記事で紹介されたその他の「80日戦闘目標」遂行単位は、機械工業部門のいくつかの工場と「平壌市地方工業管理局(傘下)の数十個単位」であり、部門全体とか有力企業所などにおける成果達成は、これまでのところ、極めて限定的な水準にとどまっているのが実情である。

 その少ない例に関連して、本日、「不可能を知らない頑強な闘争姿勢で忠誠の80日戦闘を輝かしく締めくくろう」との共通題目の下で掲載された「国の鋼鉄(の)柱をよりしっかりと」と題する記事は、「80日戦闘目標に反映された銑鉄、鋼鉄、圧延鋼材生産計画を完遂」した金策製鉄連合企業所の取り組み状況を紹介している。

 いずれにせよ、「80日戦闘」における各部門なり企業なりの目標がどのような基準により設定されたのか判然としない以上、それが達成されたか否かは、絶対的な意味で北朝鮮経済の状況を図る上では、限定的な意味しか持ちえないであろう。「80日戦闘」設定に際しては、本来、「国家経済発展5カ年戦略遂行の最後の界線」との意義付けがなされていたはずであったが、だからと言って「80日戦闘」目標を完遂すれば、それが直ちに「5か年戦略」の目標実現を意味するものではない(更に言えば、今年度の目標達成でもない)と考えられるからである。結局のところ、「80日戦闘」の目標は、「努力目標」であり、その達成は、「全力で頑張った」ことを意味するものでしかないのかもしれない。

 しかし、別の見方をすると、客観的に意味のある生産目標実現が現実的に見込めない状況において、頑張れば実現可能な目標を改めて設定し、それを目指すことによって、「みんな頑張ったよね」という満足感・成就感を共有することが可能になったとすれば、それは、政治的には大いに意味のあることであり、それがまさに金正恩の目指すところではないかと考えられる。