rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年1月25日 党政治局メンバーの部門別構成

 

 最高人民会議での内閣改造も終わり、また、地方の党指導部の顔ぶれも概ね明らかになったようなので、先の党大会(厳密に言えば、第1回中央委員会)で選出された党政治局メンバーについて、各自の所属部門を基に整理してみた。

 

 まず、常務委員会委員をみると、「1김정은:総秘書(中央軍事委委員長)、2최룡해:最高人民会議常任委員会委員長、3조용원:党中央委秘書(軍事委委員)、4리병철:党中央委秘書(元帥、中央軍事委副委員長)、5김덕훈:内閣総理」(数字は序列を示す。以下同)となっており、金正恩を除くと、最高人民会議、党、軍、内閣から各々一人が選出されている。

 次に政治局委員14人を見ると、「6박태성:党中央委秘書兼宣伝扇動部長、7박정천:人民軍総参謀長(元帥、軍事委委員)、8정상학:党中央委秘書(中央検査委委員長)、9리일환:党中央委秘書兼勤労団体部長、10김두일:党中央秘書兼経済部長(前平安南道党委員長)、11최상건:党中央委秘書兼科学教育部長、12김재룡:党中央委組織指導部長、13오일정:党中央委軍政指導部長(軍事委委員)、14김영철:党中央委統一戦線部長、15오수용:第2経済委員長(軍事委委員)、16권영진:人民軍総政治局長(大将、軍事委委員)、17김정관:国防相(大将、軍事委委員)、18정경택:国家保衛相(上将、軍事委委員)、19리영길:社会安全相(上将、軍事委委員)」となっており、党中央委秘書ないし部長が8人、軍・治安関係機関責任者が6人となっている(第2経済委員会は軍関係機関とみなした)。なお、党秘書・部長のうち経済に関連するのは、10,11の2人である。

 最後に政治局候補委員11人を見ると、「20박태덕:党中央委規律調査部長(中央検査委副委員長)、21박명순:党中央委軽工業部長、22허철만:党中央委幹部部長、23리철만:党中央委農業部長(前黄海南道党委員長)、24김형식:党中央委法務部長、25태형철:最高人民会議常任委員会常任委員会副委員長、26김영환:平壌市党責任秘書、27박정근:内閣副総理兼国家計画委員会委員長、28양승호:内閣副総理、29전현철:党中央委経済政策室長兼内閣副総理、30리선권:外務相」となっており、党中央委部長が6人、地方党責任者が1人、最高人民会議が1人、内閣メンバーが4人(29は党・内閣両方にカウント)となる。このうち、経済に関連するのは、5人である(28は担当不詳だが機械工業相の前歴から経済担当とみなした」)。

 以上を通算して金正恩を除く29人の所属機関を見ると、党機関16人、軍・治安機関7人、最高人民会議2人、内閣5人となる。その中で経済関連の部門に属する者は、総理を含め8人である。また、軍事・治安関連も8人となる(24を含めた)。

 ここから言えることは、人事面(特に党内序列の面)からいうと、党が内閣に対し圧倒的に上位にあるということである。総理こそ常務委員に名を連ねているが(最下位だが)、政治局委員には一人も含まれず、候補委員の下位圏に副総理及び外相の4人(うち一人は党部長兼務)が含まれているだけである。「内閣責任制」とか「内閣中心制」とか言っても、それは、地方とか個別企業に対しての表現であって、経済政策に限っても、内閣が党中央の指導下に置かれていることは、否定しがたいと考える。

 また、経済関連部門と軍・治安部門の所属者が奇しくも同数となっていることも注目される。「経済建設集中」とのスローガンとは裏腹に、党高位指導部の構成は、「経済と軍事の並進」を示唆しているように思われる。更に言えば、軍事・治安部門の大半が政治局委員以上であるのに比し、経済部門の半数以上が候補委員(議決権を持たない)で占められていることも、実質的な意思決定に影響するものではないにせよ、象徴的な意味合いを感じさせるものである。