rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年2月14日 社説「党中央委員会第8期第2回全員会議精神を高く掲げ5か年計画の初年度課題を徹底して遂行しよう」

 

 標記社説は、まず、「このたびの全員会議の基本精神」として、「5か年計画の初年度から進軍歩幅を大きく踏み出し、党大会の権威を固く保衛し、人民が期待する実際的な結果を必ずや成し遂げようというもの」と説明し、会議が「我が幹部が今日の重大な時期に党と人民の前に帯びた自らの責務をまっとうしていくようもう一度覚醒奮発させた転換的契機となった」と主張する。

 更に、会議で行われたことについては、金正恩が「報告」において、「5か年計画遂行のための今年の作戦計画を発展志向性と力動性、牽引性、科学性が保障されて立てられるようはっきりとした方向と方途を提示」し、(それを受けて)「分科別協議会では、党中央指導機関メンバーと関係幹部の真しな討論を経て今年遂行すべき革新的な目標を確定」したと説明している。

 その上で、こうして策定された初年度課題の遂行に向けた方策として次の点を強調している。第1は、「先進科学技術と人材」の重要性である。第2は、「国家経済指導機関の機能と役割を決定的に高める」ことである。第3は、「人民経済計画遂行を法的に確固として担保する」ことである。これに関しては、「現時期、国家の存立と発展、社会主義経済建設の主たる障害となっている単位特殊化、本位主義との法的闘争を強度を高く展開する」ことが訴えられている。第4は、「党事業の火力を今年の経済課題遂行に総集中する」ことである。

 そして、最後に改めて呼びかけているのは、「今年の経済事業を国家的な非常防疫規律を徹底して堅持しつつ、自立経済の潜在力を発揚させ、人民生活を最大限安定させる方向において組織」することである。

 同社説の以上のような表現は、今次全員会議で起きたこと、そして、北朝鮮が現在目指す方向性、方途を端的に示すものと考えられる。ただ、問題なのは、「自立経済の潜在力の発揚」と「人民生活の安定」が本当に両立可能なのかという点である。「二兎を追うものは一兎を得ず」の結果になる可能性を指摘しておきたい。金正恩流に言うと、そういう発想が「敗北主義」なのかもしれないが。

 なお、前記4番目の点に関して、本日の「労働新聞」は、「党政策貫徹の組織者、旗手としての責任と役割をまっとうしていく火のような熱意 党中央委員会第8期第2回全員会議に関する報道に接した党幹部たちの反響」との共通題目下、党幹部の投稿文を掲載している。これは、昨日の経済部門幹部の投稿文に次ぐ全員会議のフォローアップ企画といえよう。

 その冒頭は、「経済事業と人民生活に実際的な成果をもたらすことができるように」と題する内閣政治局局長림경만の投稿文で、「全員会議に参加して、経済事業に対する党的指導を斬新に行えなかったことについて深刻に振り返らされた」と反省の弁を述べた上で、今後は、「省・中央機関のすべての党組織と党幹部が党政策貫徹の組織者、旗手としての使命感を深く堅持し、国家経済発展5か年計画遂行の初年度である今年の経済課題を無条件に遂行することに党事業の火力を総集中させるようにする」との決意を披歴している。そして、そのために「まず、幹部の中に内在している敗北主義的で保身主義的な事業態度を根絶するための革命的な対策を立てて行く」としている。ちなみに、内閣政治局というには、内閣にある党委員会の政治機関(執行部)であり、人民軍の総政治局に相当するものと考えられる。

 次の記事は、「党的指導、政策的指導を深化させ」と題する平安北道党委員会責任書記文景徳の投稿文で、やはりまず従来の活動不足についての反省を述べた上で、今後は、「道党委員会では、経済事業に対する方向舵としての役割を強化することに努め、すべての党組織が高い政策的眼目で主動的に、献身的に経済事業を牽引するようにする」との決意を述べている。

 このほか、「思想事業を親人民的、親現実的に」との題目の下で、千里馬製鋼連合企業所と興南肥料連合企業所の党委員会責任秘書の投稿文を掲載している。

 ここから分かることは、「内閣責任制」とか「国家経済指導機関の強化」とか言っても、それは決して党組織の役割・機能の低下を意味するものではなく、両者は、いわばメビウスの輪のように表裏一体と関係にあるということである。

 なお、第3番目に指摘されている「単位特殊化」の問題も、非常に注目される、また重要な問題である。後日改めて論じたい。