rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年3月3日 農村に除隊軍人を大量送り込み?

 

 先般、韓国の報道で、先の党大会において金正恩が経済建設に向けた方策として若年労働力の供給を狙いに徴兵軍人の服務期間を2年程度短縮する方針を示したとの国情院の情報が紹介されたことがあった。その後、それについては特段の続報がなかったのだが、本日の「労働新聞」にそれとの関連がうかがわれる興味深い記事が掲載された。

 「わが党が育てた社会主義農村の核心、やまびこ除隊軍人達 去る10余年間農場に忠誠の足跡を刻んできた 전천郡の12人の除隊軍人と彼らのためまごころを捧げてきた郡当委員会幹部についての話」と題する記事がそれである。同記事は、2011年1月、金正日から激励の手紙を受け取った農村進出(実際は送り込まれた?)除隊軍人のその後の活動を紹介するものであるが、その前段に、金正恩が先の党大会において、除隊軍人の農村への派遣について言及したことを明らかにしている(これまでの党大会関連報道ではそのような言及なし)。当該部分は、次のとおりである。

 「(金正恩は8党大会で)社会主義農村陣地を強化することに党的、国家的注目をはらわなくてならないと強調しつつ、農村に除隊銀人を多く派遣し、彼らを勉強もさせ、体系的に育てて社会主義農村を整え発展させる上でのしっかりした柱、頼もしい核心となるようにしなければならないと懇ろに教えられた」

 また、記事の最後は、次のように結ばれている。

 「わが党は、社会主義守護の最前方である農業前線に革命的気性がみなぎり、人民の食糧問題、食べる問題を解決するための決死の闘争において、軍人精神で武装した除隊軍人が先鋒隊、突撃隊になることを望んでいる。全国の市・郡党委員会幹部は、党の構想と意図を高く奉じ、協同農場に駆け参じた除隊軍人たちが文明的で富裕な社会主義農村建設において核心的役割を果たすことができるかできないかという死活的な問題がまさに自分たちにかかっているということを肝に銘じ、敬愛する総秘書同志の火のような愛と信頼で彼らを温かく面倒を見、忠誠の一路に導き社会主義農村陣地を岩のように固めなくてはならない」

 前掲の情報とこの記事内容を総合すると、農村への配置を前提にして、徴兵軍人の服務期間を繰り上げて除隊することを認める措置を打ち出したということではないだろうか。

 確かに、農業振興(食糧増産)のためには、効果的な方策かもしれないが、派遣される除隊軍人たちにとっては、長年の軍隊勤務の果てが農村への配置ということになり、その心情は察するに余りあるものがある。先の党中央軍事委員会で軍の紀律引締めが強調されたばかりだが、将来がそれでは、士気の維持は難しいのではないだろうか。

 

 ちなみに、記事題目中にある「やまびこ」というのは、2010年当時注目を集めた、除隊軍人を主人公にした演劇の題名が「やまびこ」であり、金正日の手紙の中に「やまびこの主人公にように・・」との一節があることを受けてのものである。当時、金正日が同演劇を2回も観覧したことが報じられ、「ボケた」のではないかとの憶測まで流れたこともあったような記憶がある。