rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年3月4日 第1回全国市・郡党責任秘書講習会を開催

 

 本日の「労働新聞」は、標記講習会が3日から党本部庁舎において、金正恩出席の下、開催されたことを報じている。

 同報道によると、この種講習会の開催は党の歴史上初めてのことであり、「市・郡党組織の機能と役割を非常に高め全党の戦闘力を固めて、地方経済と人民生活を発展向上させる」ことを目指したものとされ、全国の市・郡党の責任秘書のほか、道党責任秘書及び党中央の関係幹部らが出席したという。

 講習会では、まず、「指導」のために出席した金正恩が「開講辞」を述べ、「全国の均衡的同時発展を促進する」上での「党政策の末端指導単位、執行単位であり、農村経理と地方経済を指導する地域的拠点であり、国の全般的発展を支える強力な堡塁」としての市・郡の重要性を強調するとともに、その活動を指導する「市・郡党責任秘書の実務水準を高め、事業作風を改善する」ことを狙いとして同講習会を準備したとして、参加者が「人民大衆第一主義を具現した主体の党事業原理と方法を深く体得」することなどを訴えた。

 次に、「市・郡党責任秘書の近年の党事業状況を全面的に分析し、収めた成果と経験、現れた欠陥と原因を総括し、実際的な改善対策を立てるための会議」が行われたという。

 そこでは、「組織秘書である趙勇元同志」(常務委員。同人のこの職責が明らかにされたのは初めてこと)が「報告」を行い、「市・郡発展に顕著な成果を収めている責任秘書たちの経験を紹介」するとともに、「一部市・郡党責任秘書たちと市・郡党委員会の活動において現れている欠陥」について「解剖学的に分析」し、「党内部事業を軽視し、行政経済事業に対する党的指導、政策的指導を正しく行わないでいる欠陥とわが党の人民大衆第一主義を適切に具現できないでいる偏向」を「辛辣に批判」したとされる。

 さらに、「党中央委員会が市・郡党委員会の党政策執行状況について評価した全国的な市・郡別順位が発表」され、その後、「討論」が始まったという。同講習会は「継続される」とのことである。

 以上の報道から見る限り、同講習会の開催は、地方経済の活性化を促進し、都市住民に比較して落伍している地方住民の生活向上を図ることを基本的な狙いとするものであるが、指導内容としては、党幹部の「行政代行」を是正し、党本来の機能・役割を適切に発揮させることを目指しているようにみえる。

また、名称は「講習会」と称しているが、単なる知識の伝達ではなく、党大会の際にも見られたような経験の客観的な評価に基づく問題点の指摘・教訓の摘出や実現可能な具体的な改善対策の検討など、実務的な会議運営を目指しているように思われる。金正恩流の指導方法といえよう。

 なお、報道には直接的な言及はないが、同講習会では、昨日の本ブログで紹介した除隊軍人の農村派遣方針に関連した、地元の受け入れ対策等についての指導が行われる可能性もあろう。住宅をはじめとする受け入れ対策が不十分で彼らに不満を抱かれれば、折角の派遣効果が発揮できないどころか、軍隊経験のある若者集団であるだけに予想外の治安問題などを惹起しかねないからである。

 余談であるが、本日の「労働新聞」には、「社会主義農村建設を促進する上で里党委員会の役割を決定的に高めよう 国の4000分の1を受け持ったとの高い党的自覚を抱いて奮発しよう」と題する評論も掲載されている。金正恩は、市・郡を「末端指導単位、執行単位」と称したが、実際の末端単位は、郡党の下位に置かれる「里党委員会」であろう。

 同評論は、全国に約4000の里が存在することを前提に、「里には国の4000分の1に該当する領土があり、住民がおり、土地,農機械をはじめとした生産手段と各種財産がある。里にはまた、学校、病院、託児所、幼稚園のような教育文化保健機関と便宜奉仕(サービス)施設などがある。里にあるこれらすべてに責任を持っている主人は、里党委員会であり、里党委員会の責任者は里党秘書である」として、その機能・役割の強化を訴えている。

 同評論が求める里党委員会の課題は、①「何よりも、農業勤労者を革命化、労働階級化するための思想教養事業を攻勢的に展開するこ」、②「基本革命課題である農業生産において革新を成し遂げるための党的指導をしっかり行うこと」、③「農村を50年、100年を展望しつつ、当該地域の特性が生きるよう計画的に建設し、全般的な面貌を改変させること(住宅、学校、便宜奉仕施設の建設など)」である。

 結論を急ぐようだが、これは、市・郡党委員会に求められるところとも共通する課題なのではないだろうか。