rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年3月21日 科学技術の普及・深化を訴え

 

 本日の「労働新聞」は、冒頭に科学技術の普及を訴える記事をいくつか掲載している。

 まず、「敬愛する金正恩同志の名言解説」と題する解説記事は、「知識経済時代は労働者も現代科学技術を所有する技術型の人間、知識型の人間になることを要求する」との言葉を取り上げている。そこでは、この言葉の趣旨を「科学技術の時代である今日、すべての勤労者を現代科学技術を所有する技術型の人間、知識型の人間として育て、国家発展の力強い担当者として押し立てていくことがわが党の意図である」と説明するとともに、その背景にある、「持続する挑戦と障害を突破し、自力富強、自力繁栄の活路を確信性をもって開いていくための最善の方略は、科学技術を確固として優先させること」との認識を示している。

 また、「火のような愛国献身に科学者の真実の生命がある」と題する論説は、「愛国心は誰にとっても大切なものであるが、特に我々の科学者、技術者においてこの上なく貴重である」と主張する。その理由としてあげられるのは、「科学と技術の時代である今日、科学技術の発展水準によって国力が決定され、国と民族の地位と前途も左右されることになり、これは、科学技術発展の直接的担当者である科学者、技術者の役割を離れて考えることができない」が、科学技術研究の道は困難なものであるので、「愛国心なくして科学探求の遠い道を最後までいくことはできない」「愛国心の真価は、困難なとき、よりはっきりと表れるものである」ことである。そして、科学者、技術者に対して、そのような愛国心を存分に発揮して、「祖国繁栄に実際に貢献することのできる科学技術成果を提出すること」を求めている。

 このほか、科学技術の具体的適用例を紹介するものとして、「国産化及び再資源化のための研究事業に力を集中」と題する記事も掲載されている。同記事は、「国家科学院咸興分院で国産化再資源化のための研究事業に力を注いでいる」ことを報じるもので、前者に関しては、「触媒を国産化し、その質を改善するための研究事業」や「各種化学補助薬剤を国産化し皮革加工工業、紡績工業、羽毛加工工業部門」などに裨益していることを、後者に関しては、「各種排泄物と廃棄物、生活汚物から化学製品原料を得るための研究」がなされていることなど紹介している。

 以上のような一連の記事からは、北朝鮮が今日の「自力更生」「自給自足」体制構築という戦略的目標実現のための最重要の方法として科学技術の活用を位置づけ、そこに全力を注いでいることを改めて確認することができよう。ただ、科学技術と言っても、魔法の杖ではないので、それによって、本当に金正恩が期待するほどの成果をあげることができるのかは、また別問題というべきであろう。