rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年4月9日 党第6回細胞秘書大会が閉幕

 

 本日の「労働新聞」は、標記大会3日目(4月8日)の状況に関する記事を掲載し、その閉幕を報じた。

 まず、同日の概況を紹介すると、最初に昨日に続いて9人が「討論」を行った。初日から「討論」を行った者の合計は、40人となる。

 次に、金正恩が「現時期、党細胞強化において提起される重要課題について」と題する「結論」を述べ、10個の「重要課題」及び細胞秘書が帯びるべき12の「基本品性」を提示するなどした。

 その後、「模範的な細胞秘書」50人(氏名のみ報道)に対して、金正恩が「朝鮮労働党総秘書表彰状」を直接授与した。

 最後に金正恩が「閉会辞」を述べ、大会が閉幕した。

 なお、金正恩の「結論」については詳細な紹介記事が、「閉会辞」については全文が別途掲載されている。

 以上の日程のうち、「討論」について、発言者の所属組織を見ると、①山林経営所、②市党委員会、③対外建設者養成事業所、④農場、⑤タイル工場、⑥映画文学創作社、⑦鉱山、⑧林産事業所、⑨8月21日工場(軍需工場か)となっている。このうち、模範的活動の類型としては、①が「単位の特性に即して党生活指導」を実施、③及び⑧が「同志のため信念をみな捧げて」所属組織の団結を強化、⑤が「大衆の精神力を発動」、⑨が「決死貫徹の闘争伝統でしっかりと武装させ、大衆的技術革新」を実践したことなどが紹介された。一方、欠陥事例としては、「組織事業と掌握指導事業を緻密に実施できない問題」「党の領導業績を通じた教養事業を実質的に行えない問題」「革命的群衆観点が正しく立てられないでいる問題」などが挙げられているが、発言者の特定はされていない。

 金正恩の「結論」では、まず、前回の細胞秘書大会以降の党組織活動を総括する中で、「党第7回大会が提示した経済課題が甚だしく未達成であり、社会的に否定的な現象が克服されていない現実態を分析」し、「党細胞がその役割を正しく果たしていないところに重要な要因がある」として、「党細胞の事業に内在している重要な欠点(複数)について指摘」した。

 次に、細胞秘書にとっての最も重要な任務として、「党細胞を人間的に固く団結した健康で活気旺盛な細胞にする」ことをあげ、そのための具体的方策として、「現時期、党細胞の前に提起される10個の重要課題と細胞秘書が帯びるべき12の「基本品性」を説明した。

 このうち、10の重要課題は、次のとおりである。

  • 党員と勤労者を党の路線と政策でしっかりと武装させること(各細胞に伝達された党の方針と指示を定期的に改めて確認)
  • 党員と勤労者の中で5大教養を基本として思想教養事業を実質的に展開すること(5大教養:革命伝統教養、忠実性教養、愛国主義教養、反帝階級教養、道徳教養。対象の特性と準備程度に即して)
  • 党規約学習を強化し、党生活を正規化、規範化すること(新たに改定された党規約の周知徹底。特に、党細胞総会の正常運営:月1回、党生活総括の実践:下からの批判強化)
  • 党員の党組織観念を高め、自覚的な党生活気風を確立すること(特に幹部。党生活に党員の高低、例外となる党員はない)
  • 細胞事業を党大会と党中央の重要決定貫徹へと確固として志向させること(決意目標遂行状況を定期的に総括)。ここで、金正恩は、主要経済部門ごとに「新たな5か年計画を徹底して貫徹するための課題と方法を具体的に提示され」たという。
  • 科学技術の力で自己の単位に託された革命任務を責任をもって遂行すること(細胞事業計画に科学技術学習と技術革新のための目標を反映。新技術導入を阻害する経験主義と保守主義と闘争)
  • 入党対象者を掌握し、教養すること(「党員の中で役割を果たせない対象が生じるに至っている」、入党対象者を厳選)。党大会で党員候補期間1年から2年に延長と関連か
  • 青年教養に特別に力を注ぐこと(新世代の思想精神状態に深刻な変化が起きている現実。党と革命、祖国と人民の死活がかかった問題。母のような細心の見守り・・で常に強要し、統制)
  • 人間改造事業を積極的に展開し、集団内に助け導く共産主義的気風があふれるようにすること(遅れた人々(現行に問題がある人)を社会主義的勤労者、愛国的な勤労者にする事業。「一人は全体のため、全体は一人のため」のスローガン強調)
  • 社会主義、非社会主義的現象との闘争を強く展開すること(単位特殊化と本位主義、権力乱用と官僚主義、不正腐敗行為との闘争にも言及)

 また、「基本品性」としてあげたのは、党性、原則性、政治性、責任性、率先垂範、創発性、群衆性、人間性、真実性、楽天性、道徳性、清廉潔白性である。

 金正恩は、結語の最後で、「細胞秘書に対する党中央の期待は非常に大きい」などと述べて、その奮闘・献身を改めて訴えた。

 また、「閉会辞」においては、今次細胞秘書大会の「基本思想」は、「すべての党細胞を人間的に固く団結した健康で活気旺盛な細胞にしよう」ということと強調し、「大衆の心を動かす」ことなどを訴えた。

 更に、「我が党が強力で堅固なのは、総秘書や党中央政治局などがあるためではなく、党細胞秘書がいるため」などとして、信任と期待を強調した上で、「人民に最大限の物質文化的福利を抱かせるため、私は、党中央委員会をはじめとして各級党組織、全党の細胞秘書がより厳しい『苦難の行軍』を行うことを決心した」と述べ、その奮起を促した。

 韓国の報道などでは、この「苦難の行軍」の表現に強く注目しているようだが、ここでの「苦難の行軍」との表現は、あくまでも党関係者の奮起を促すための修辞として用いられているのであり、今後の具体的な政策とりわけ対外政策等と過剰に結び付けて考えるべきではないであろう。その目的が「人民への最大限の物質文化的福利」の供与とされていることを無視するべきではない。