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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年4月30日 青年同盟大会閉幕、新名称は「社会主義愛国青年同盟」に

 

 本日の「労働新聞」は、27日開幕した標記大会が3日間の日程を終え、29日に閉幕したことを報じ、関連の記事を掲載している。

 同報道によると、まず、28,29両日における主な会議進行状況は、次のとおりである。

①第1議題(中央委員会事業総括)に関する「討論」:口頭での討論が6人、「書面討論」参加者が9人。

 初日の4人と合わせて19人の討論者の所属組織の内訳をみると、地域の青年同盟組織代表が平壌市6人、黄海北道が3人、咸鏡南道が2人、黄海南道平安北道・江原道・南浦市が各1人、その他機関の青年同盟組織代表が朝鮮人民軍2人、内閣、速度戦青年突撃隊が各1人となっている。咸鏡北道の代表がいないなど地域によって偏りがあるが、同盟員の数を反映しているのか、あるいは功績などを反映しているのかは不明である。

②第2議題(中央検査委委員会事業総括)に関する「報告」及び「討論」:報告者、討論者の氏名・所属、発言内容に関して具体的な報道なく、全会一致で報告が承認されたことのみ報道 

③第3議題(名称変更):「報告」に基づき、新たな名称を「社会主義愛国青年同盟」とする「決定書」を採択(同「決定書」(4月28日付け)は、別途全文を掲載)

④第4議題(規約改正):「報告」に基づき、規約改正に関する決定を全員一致で採択(改正内容等に関する言及なし) 

⑤第5議題(中央指導機関選挙):まず大会で中央委員を選出後、中央委員会第1回全員会議を開催して、執行委員会、委員長(文哲:音訳)及び副委員長9人を選出、組織委員会を構成、中央検査委委員会委員長・副委員長・委員を選出、中央委員会部長(複数)及び青年前衛新聞社主筆を任命(以上の中央委決定内容は、李日換党秘書が発表)。 

⑥第1議題に関する決定書の採択:新たに選出された中央指導機関メンバーにより「大会決定書草案作成委員会」を構成、同委員会での審議及び「代表たちが提起した創発的で建設的な意見を補充反映」した決定書を全員一致で採択(こうした決定書の採択方法は、先の党大会で取り入れられたもの。ただし、代表からの意見反映は初めての試みか?) 

⑦同盟旗授与:金正恩の「委任」により李日換党秘書が「社会主義愛国青年同盟旗」を授与 

金正恩の書簡伝達:「革命の新たな勝利に向けた歴史的進軍において社会主義愛国青年同盟の威力を力強く轟かせよ」と題する金正恩の書簡を金再才龍党組織指導部長が伝達。書簡骨子は後述 

⑨閉幕:「金正恩将軍、命懸けで死守せん」の吹奏・合唱で閉幕

 以上の内容のうちどこまでが2日目(28日)に、どこからが3日目(29日)に行われたのかは明記されていないが、③の決定書の日付が28日であることや議事の流れなどから、大会の場では28日に⑤の新中央委員の選出までが行われ、29日には新執行部が紹介された後、⑥以下が行われたのではないかと推測することができよう。

 更に、大会閉幕後と思われるが、29日に錦繡山太陽宮殿において、金正恩と大会参加者との記念写真撮影が行われたことも報じられている。

 金正恩の書簡は、相当長文のものだが、主な特徴は、次のとおりである。

①新たな名称について:「現段階における青年運動の性格と任務を直線的に明白に盛り込まれている」と評価し、「すべての青年が社会主義を生命のように貴重なものとみなし、その勝利のため代を継いで固く闘争する愛国青年」になるよう訴える一方、「同盟の金日成金正日主義化」という目標には何ら変更がない旨を力説 

②「現時期の青年同盟の基本目標」:1⃣「すべての青年を社会主義を信念として堅持する愛国青年としてしっかりと準備させる」こと、2⃣「党第8回大会決定貫徹のための実践闘争の中ですべての青年を栄えある社会主義建設者として育てること」、3⃣「青年を社会主義道徳と文化の真の主人とすること」、の3点を提示 

③青年同盟の組織強化について:思想教養活動のマンネリ化防止、「組織生活蹂躙者、未組織者問題」解決、基層組織に対する指導強化、幹部の役割強化(「腰掛的観念」の払拭)、党組織による指導強化などを強調

 以上の中で特に注目されたのは、②の1⃣に関し、「今の青年世代は、国が試練を経た苦難の時期に生まれ育ったために、我々式社会主義の真の優越性に対する実体験と不足し、甚だしくは一部誤った認識さえ抱いている」との評価を示していることである。これまで巷間では「苦難の行軍世代」の意識は以前の世代とは劇的に変化しているといわれてきたが、それを最高指導者が自認したことになる。

 金正恩は、その上で、「我々式社会主義の本質的特徴と優越性」を理解させること、そのために「千里馬時代青年たちの思想精神と闘争気風を見本とするようにする」とともに、「資本主義思想、個人利己主義をはじめとした反動的な思想要素との非妥協的な闘争」を訴えている。最後の点については、3⃣においても、更に敷衍して強調されている。また、2⃣においても、経済建設への貢献だけでなく、それを通じた青年の教化を強調しており、青年同盟に対しては、青年層に対する思想教化面での機能を何よりも重視していることが改めてうかがえる。

 名称変更の理由も、青年層に対する以上のような危機感を背景に、「金日成金正日主義」といった高邁なイデオロギー的概念では響かないので、より訴求力のある(分かりやすい)「社会主義」「愛国」の概念を掲げて、その浸透を図りたいとの狙いによるものと考えられる。