rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年5月8日 論説「建築には時代の思想と文明の高さが示されている」

 

 標記論説は、北朝鮮の建築論を前提に最近の平壌市1万世帯住宅建設等を論じたもの。

 まず、一般論として、「建築には時代の思想が直感的に反映される」「建築は時代の文明の高さが反映される尺度である」との前提を提起する。

 その上で、現代北朝鮮の建築に関し、「主体の社会主義建築は、本質において人民大衆第一主義建築である」「労働党時代に建設される多数の建築物には内容と形式において世界に声を上げて自慢することのできる社会主義文明が示されている」と主張する。

 そして、現状に関して、「今、我が国家の首都をより美しく雄壮に変貌させようとする党中央の雄大な構想と決心にしたがって、平壌市1万世帯住宅建設と普通江江岸楼閣式住宅建設が本格的に推進されている」ことを取り上げ、「新たな形式の住宅で首都の面貌が一新されれば、社会主義文明の中心地としての我が首都の現代性と主体的な建築発展面貌が誇示され、人民に発展した生活環境と条件、他人が羨ましくない物質文化的福利が提供されるようになる」との展望を示している。

 同論説の以上のような主張は、基本的には、従前からある建築論を繰り返し、その基礎の上で最近の平壌市1万世帯住宅等の建築事業の意義を論じたものと言えよう。

 ただし、引用最後の部分の「人民に発展した生活環境と条件、他人が羨ましくない物質文化的福利が提供されるようになる」との表現は、このところの金正恩の「強国」構想の特色ともいえる「人民が幸福を享受する」との発想と一脈通じるものである。そこからは、これら建築事業と同構想との関連を改めてうかがうことができよう。

 個人的には、「15年」先の北朝鮮社会の様相を生きて目にすることは困難と思われるが、年内完工予定の1万世帯住宅及び普通江江岸楼閣式住宅は、コロナから逃れられれば、目撃可能であろう。これだけ言うからには、果たしてどんなものが出来上がるのか、大いに楽しみにしてその完成を待ちたい。