rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年6月2日 党規約改定内容判明

 

 1月の労働党大会において改定された新たな党規約(当時は、概要のみ公表)に関し、韓国の報道各社が昨日から報道を開始した。それらで報じられている主な改正点及びそれに関するとりあえずのコメントは、次のとおりである。

①党中央委員会に「第1秘書」職の新設。「総秘書代理人」と規定。

→ これに関し、趙勇元(常務委員・組織秘書)が選出されたとの推測がかなり有力視され、日本の報道でもこれを伝えている。しかし、党規約は、あくまでもポストの設置を定めているだけであり、その後の中央委員会全員会議に関する報道で、その選出が報じられていない以上、誰も就任していないと考えるのが自然であろう。仮に誰かが選任されたとすれば、それを敢えて秘密にしなければならないとは考えにくい。それを秘密にするのであれば、ポストの新設も秘密にするべきであろう。体調不良時などの備えのための規定ではないだろうか。

②「祖国統一」関連文言の修正:「朝鮮労働党の当面の目的」を、「全国的な範囲で民族解放民主主義革命の課業を遂行」から「全国的な範囲で社会の自主的かつ民主的な発展の実現」に変更。党員の義務について「祖国統一を早めるために積極的に闘争しなければならない」という部分を削除し、「南朝鮮(韓国)から米帝の侵略武力を追い出し、あらゆる外国勢力の支配と干渉を終わらせ、日本軍国主義の再侵略策動を叩き潰して」という内容を「南朝鮮に対する米国の政治、軍事的支配を終局的に清算し、あらゆる外国勢力の干渉を徹底的に排撃し」に変更。

→ 「祖国統一」よりも北朝鮮の体制保全を重視という長年の傾向が反映されたものであろう。ただし、「当面の目的」の後に最終的目標に関し従前には「全社会の主体化」といった規定があったように記憶しているが、それがどうなっているのか興味がもたれる。

③「基本政治方式」として、従前の「先軍政治」を「人民大衆第一主義政治」に変更

→ 党大会時に示唆されていたとおりで、いわば想定内の内容。

金日成金正日金正恩の固有名詞をすべて削除。一方、「金日成-金正日主義」については、10回言及、「革命と建設の永遠の旗印」と規定(従前は「朝鮮労働党が革命と建設を指導する上で指導的指針」)

⑤「首領」表現減少の一方、「党中央」が増大:以前の党規約に15回登場した「首領」という表現が、新しい規約では8回に減り、一度も明記されたことのない「党中央」という表現が新しい規約には16回登場(ハンギョレ新聞による)

→ ④及び⑤を通じて、韓国報道では、「個人による統治から(党による)制度的統治への変化を反映」といった見方で解釈している。しかし、「金日成金正日主義」は金正恩の作品であるとされていること及び最近の金正恩「首領」化の動きなどを勘案すると、むしろ、先代の存在感を希薄化した上で、金正恩の独自的権威を確立するための改定とみるべきと考える。