rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年6月20日 党中央委員会第8期第3回全員会議フォローアップ

 

 本日の「労働新聞」は、標記に関する記事が満載である。

 まず、金正恩が「党中央指導機関メンバー」(=中央委員会メンバーのこと)と共に国務委員会演奏団の公演を観覧し、「全員会議参加者が以民為天、一心団結、自力更生の理念をゆるぎない信条として堅持し、偉大な我が国家と人民のため奮闘する真正な革命家となり、我が党闘争綱領の輝かしい実行を革新的な事業成果で担保するであろうとの確信を表明」したことが報じられている。重要な会議の後、参加者にこうした公演を観覧させるのは、このところ恒例化しているようである。最初は、「慰労」的な意味合いがあるのかと思っていたが(俗人的発想!)、むしろ、会議で理論的に伝達したことを、公演を通じて情緒的に感じさせる(心に刻み付ける)ことにより重要な狙いがあるのかもしれない。ただ、今回不思議なのは、観覧状況の写真がこれまでのところ示されていないことである。また、金正恩に同行した主な幹部についてもまったく言及がない。これは異例な報道ぶりであるが、理由はなんとも推測しがたい。

 次に、「今年の総進軍をより一層促進させる嚮導的闘争方針と実践行動課題を確定した歴史的な会議 党中央委員会第8期第3回全員会議に対する反響」との共通題目の下、各分野幹部の投稿文や発言を紹介する記事が掲載されている。筆頭は、「百折不屈の革命精神は我々の永遠の生命力」と題する内閣副総理・李城学(音訳・前軽工業相、軽工業部門担当か)の投稿文、これに続いて、「党中央が示す勝利の針路に従って前へ!」と題する平安北道党委員会秘書・朱哲南(同)及び「百倍に奮発奮闘して今年の経済計画を無条件完遂する」と題する金属工業省副相・楊浩(同)の投稿文である。発言紹介は、北倉火力発電連合企業所支配人、2・8直洞青年炭鉱支配人、清津鉄道局局長のものである。こういったところが最も頑張ってもらいたい部門なのであろう。

 また、「党中央委員会第8期第3回全員会議の核心事項」と題する評論もある。同評論は、「現時期、人民が第一に関心を払い望む切実な問題(複数)を至急に解決するための決定的な施行措置を取ろうというのが今次全員会議の核心事項である」との金正恩の発言を敷衍・強調するものである。「革命の新勝利のための今日の総進軍は、人民生活向上大進軍であり、人民に安定した生活を保障しあい路を適時に解決してやることは、我が党と国家が最重大事とする活動原則である」と主張している。

 加えて、「党幹部は困難で大変なときであるほど人民のもとにより近く寄り添おう」との共通題目の下、いくつかの評論・記事が掲載されている。中でも注目されるのは、「骨を削り、肉をそぐ犠牲的な献身で」と題する評論で、「我が党(=金正恩)は、この切々とした訴えにより党幹部に時代の前で帯びた厳粛な使命をもう一度呼び覚ましてくれた」「党幹部よ、敬愛する総秘書同志のこのお言葉を寝ても覚めても心臓の中に抱いて生きよう」と人民への献身を呼びかけている。なお、これ以外の評論には、「全党が沸き立つ、人民の中へ!」「生活上の要求を適時に、円満に」などがある。共通題目はじめこれら標題に用いられた表現は、すべて、今次全員会議における金正恩の訴えを直接反映したものである。

 このほか、「偉大な我が親(オボイ어버이)」と題する政論は、金正恩について「オボイ」(この表現は金日成に対して常用されたもの)と呼ぶにふさわしいと称賛した上で、党幹部に対し、「革命の成敗は昨日も今日も隊伍の旗手である我々幹部に決定的にかかっている」として、「偉大な師匠、慈愛深いオボイの天のような信頼と期待に報いるため、骨を削り、肉をそいで懸命に努力しよう」と呼び掛けている。「骨を削り、肉をそいで」は今後しばらく頻用されるかもしれない。

 こうした本日の「労働新聞」の論調からは、今次全員会議の主な狙いが、人民生活の安定向上に向けた腐心アピールと幹部の一層の献身督励にあったことを改めてうかがうことができよう。