rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年7月11日 農業部門の当面課題と新たな「実務措置」

 

 本日の「労働新聞」は、金徳訓総理が「農業部門事業を現地了解」したことを報じる記事を掲載した。同記事によると、金総理は、黄海南道の農場をはじめとする単位を訪問し、①「災害性異常気象の影響を克服すること」、②「化学肥料と化学農薬の使用量を徐々に減らしつつも収穫高を持続的に高めることができるよう自分の地域の原料に依拠した有機質複合肥料と各種栄養液生産を増やすこと」などについて強調・督励した模様である。

 また、平安南道の諸農場においては、③「施肥と水管理を科学的に実施できずにいる実態を指摘」するとともに、④「現実発展の要求に即して経済管理方法を改善するため内閣が予見している一連の実務措置と関連した農場幹部の意見も聴取」したという。

 このほか、⑤「黄海南道平安南道の糧政部門単位と文徳郡の託児所、幼稚園を訪れて我が党が取った重大措置の施行状況を了解」したことも伝えている。

 以上のうち、①は、長雨時期を迎えた今日、農業部門をはじめとする多くの部門で当面の喫緊の課題として取り組んでいるところである。興味深いのは、②の表現で、何か有機農法でも志向しているかのような印象を受けるが、実は、化学肥料や農薬の生産不振からやむを得ずその使用を減らさざるを得ない中での苦肉の策として、「(各)地域の原料に依拠した有機質複合肥料」が脚光を浴びていると思われる。その効果が果たしていかほどのものか、疑問なしとしない。いずれにせよ、かねて韓国報道などで指摘されていた肥料、農薬不足現象を裏書きした報道と言えよう。

 また、④の「経済管理改善のための実務的措置」の内容についても、「甫田責任分担制」に次ぐ、新たな活性化策なのか、あるいは本当に「実務的」な水準のものなのか、非常に注目される。前者であるとするなら、このところの「社会主義」強調傾向に反する異例の措置となる。ただ、いずれにせよ、今は現場の意見を聴取している段階であるから、実施はしばらく先のこととなろう。

 最後の⑤は、7月6日の本ブログで指摘した金総理の現地了解記事でも報じられていたことの繰り返しである。「党の重大措置」の不履行が原因で李炳哲らが常務委員を解任されたとするなら、同総理としても、「明日は我が身」となるのを防ぐため、現場訪問の都度、施行状況を確認して遺漏なきを期しているのであろう。