rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年8月25日 論説「偉大な領導者金正日同志の革命武力建設業績は、主体朝鮮の百勝を担保する万年礎石である」

 

 標記論説は、本日が「先軍節」であることにちなんだものである。「先軍節」とは、「先軍領導」ないし「先軍」という概念が長い歴史的背景を持つものである旨を主張するために、2000年代初頭、金正日が1960年8月25日、「朝鮮人民軍近衛ソウル柳京洙第105戦車師団に革命武力に対する領導の最初の足跡を刻まれた」ことが喧伝され始め、2005年に「先軍節」と命名された後、金正恩時代に入った2013年、政令により定められた(換言すると、1990年代までは、特段顧みられることのなかった)記念日である。

 そのような記念日の特質から、同論説は、主に金正日の軍事建設に関する諸般の業績を論じているが、結びの部分では、「偉大な領導者金正日同志の革命武力建設領導業績は、今日、敬愛する金正恩同志の領導の下、輝かしく継承発展している」とした上で、金正恩が、「人民軍隊が全軍金日成金正日主義化を軍建設の総的任務として堅持」し、「朝鮮労働党化された革命的党軍」「先端化された現代的な軍」、「我が国家と人民の頼もしい守護者」となり、「社会主義建設の突撃隊としての任務を引き続き立派に果たしていく」よう「賢明に導かれている」と主張し、同人に対する全人民、全軍の忠誠を訴えている。

 なお、本日の「労働新聞」は、同論説のほかにも、「革命武力建設史と祖国青史に重要な里程標を刻んだ8月25日」との共通題目の下、関連する記事を多数掲載している。そこで注目されるのは、この標題にもみられるとおり、金正日の61年前の軍部隊訪問という事実は記念しつつも、「先軍」ないし「先軍節」という言葉がほとんど用いられていないことである。すべての記事を丹念に読んだわけではないので見落としもあろうが、少なくとも、これら記事の標題の中には一つもない。先の党大会での党規約からの「先軍」表現の削除にも示された「先軍」概念の退潮が改めて印象付けられる。

 更に言えば、米韓の合同軍事演習への劇的な対抗措置を取るのであれば、この日に合わせて実施してもよかったのではないかとも思われるのだが、これまでのところ、特段の動きは報じられていないようである。やはり、今回は、金予正、金英哲談話という「口撃」だけで済ませる算段なのではないだろうか。