rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年10月2日 最高人民会議第14期第5回会議での組織問題決定について

 

 標記に関し報道された人物の役職などを整理した(人名は音訳)。

 まず、国務委員会メンバーについて、役職を基準に解任された者と新たに選出された者の役職を対応させてみた。

・副委員長:朴奉柱(前党副委員長)→委員:呉守容오수용대의원(党秘書・経済担当)

・委員:金在龍김재룡동지(前総理)→副委員長:金徳訓김덕훈대의원(総理)

・以下は新旧ともすべて委員

李万建리만건동지(前党組織指導部長)→趙勇元조용원동지(党組織秘書)

金衡準김형준동지(前党副委員長・国際部長)→金成男김성남대의원(党国際部長)

李炳哲리병철동지(前党秘書・軍事) →朴正天박정천동지(党秘書・軍事担当)

金秀吉김수길대의원(前軍総政治局長) →該当者なし

金正官김정관대의원(前国防相) →李英吉리영길대의원(国防相

金正浩김정호대의원(前社会安全相)→張正男장정남대의원(社会安全相)

崔善姫최선희대의원(外務省第1副相)→金予正김여정대의원(党副部長)

 なお、今次会議で留任したとみられる者は次のとおりである。

委員長:金正恩

第1副委員長:崔竜海

委員:金英哲党統一戦線部長

   鄭慶沢国家保衛相

   李善権外相

 こうして見ると、委員長及び第1副委員長を除く国務委員会委のメンバーは、総理をはじめとして党の組織・経済・軍事・対南・国際の各部門責任者、外相・国防相・社会安全相・国家保衛相そして対米担当責任者といった一定の役職にある者をもって充てることになっていることが改めて確認できる。そこから言える今次の変化は、軍の総政治局長がメンバーからはずれたことである。また、金予正がいかなる立場で国務委員会メンバーに加えられたかをうかがうことができよう。

 次に、最高人民会議常任委副委員長、委員改選について見る。

・常任副委員長は、既に党秘書(科学教育担当)に異動済みであった泰衡哲태형철대의원を解任し、康潤石강윤석대의원(前中央裁判所長)を選出した。

・委員としては、かつて体育指導委員会委員長などを務めた朴明哲(1941年生まれ)が解任され(年齢から見て引退か)、新たに、文哲문철대의원(青年同盟委員長),朴仁哲박인철대의원(職業総同盟委員長),韓種革한종혁대의원(農業勤労者同盟委員長),金貞順김정순대의원(女性同盟委員長), 孟景日맹경일대의원(アジア太平洋平和委員会副委員長?)を選出した。孟を除くと、それぞれの大衆団体において最近新たに委員長に選出された者である。最高人民会議常任委員会のメンバーは、基本的に主要大衆団体の委員長によって構成する(したがって、政治的な位置づけは極めて低い)ということであろう。

 中央裁判所所長については、前述のとおり前任者が常任委副委員長に選任されたことを受けて、車明男차명남동지(前歴不詳)が選出された。

 最後に、最高人民会議の部門委員会メンバーを見る。

・法制委員会は、委員長に張正男장정남대의원(社会安全相)を、委員に禹尚哲우상철대의원(中央検察所長), 安金哲안금철대의원(平安南道党責任秘書),金乗賛김승찬대의원(金日成総合大学総長兼高等教育相)を、

・外交委員会は、委員長に金成男김성남대의원(党国際部長)を,委員に金成龍김성룡대의원(内閣副総理), 金浩哲김호철대의원(経歴・役職不詳), 徐博源서호원대의원(対外文化連絡委副委員長),金声浩 김성호대의원(経歴・役職不詳)を、

予算委員会は、委員長に呉守容오수용대의원(党秘書・経済担当)を, 委員に李在男 리재남대의원(南浦市党責任秘書), 朴志民박지민대의원(金策工業総合大学第1副総長), 金創男김창남대의원(経歴不詳)を、

それぞれ選出した。

 部門委員会のメンバーについても、専従ではなく、それぞれの部門の関連ポストにある者が充てられていることが分かる。

 結局、最高人民会議関連で専従の職として意味があるのは、常任委員会の委員長、副委員長及び書記長だけと言えるのではないだろうか。

 最後に些事であるが、人事報道の呼称において「○○同志(동지)」と「○○代議員(대의원)」の2種類が使い分けられている。前者は、今期の最高人民会議代議員として選出されていない者に付されているのであろうか(未確認だが)。