rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年4月22日 金正恩文在寅の親書交換を報道

 

 本日、朝鮮中央通信は、「敬愛する金正恩同志が南朝鮮文在寅大統領と親書を交換された」と題する記事を配信した(本日付け「労働新聞」には未掲載)。

 同記事の重要部分は、次のとおりである。

  • 金正恩は、4月20日、文在寅大統領が送ってきた親書を受け取り、21日、回答親書を送った。
  • 文大統領は、「その間、困難な状況においても、南北首脳が手を携え、朝鮮半島の平和と北南間の協力のため努力してきたことについて言及し、退任後にも北南共同宣言が統一の底流となるよう心を共にする意思を披歴した」
  • 金正恩は、「北南首脳が歴史的な共同宣言を発表し全民族に前途に対する希望を抱かしめたことについて回顧されつつ、任期最後まで民族の大義のため腐心してきた文在寅大統領の苦悩と労苦について高く評価された」
  • 「北南首脳は、互いが希望を抱いてたゆまぬ努力を傾けていくなら、北南関係が民族の念願と期待に即して改善され発展することになることについて見解を共に」した。

 本報道に関し、感じたことは、次の3点である。

 第一に、「労働新聞」に載せない、つまり国内には報じないということは、一般人民に対韓融和的情報を与える意志はないということを改めて示している。更に言えば、国内に直接影響を及ぼすような対韓政策の転換(例えば南北往来の活発化)などは、当面想定していない(コロナを考えれば、当然だが)ということであろう。

 第二に、文政権に対しては、最後まで高圧的であったということ。韓国では、この報道について、文大統領への「礼遇」的次元のものとみなす報道もあるようだが、親書交換を一方的に公開したこと、文大統領の「苦悩と労苦」に対して「評価」と表現したこと、は決して礼を尽くしたものとは言えないと考える。そもそも「苦悩」させた張本人は誰か。「礼遇」ではなく「冷遇」と評するべきであろう。

 第三に、双方が心を合わせれば、南北関係の改善も可能とした最後の一節は、尹政権に対し「お手柔らかに」とのメッセージを送り、その「鋭鋒」をそらそうとの狙いもあるように思われる。あわせて、文政権と結んだ南北共同宣言に繰り返し言及し、それがいまだ生きていることを確認した点も注目される。いずれ、都合の良い部分だけつまみ食い的に利用できるようにとの含みで、尹政権に餌を投げたともいえよう。