rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年5月26日 またもミサイル発射を報道せず

 

 北朝鮮は、昨日、弾道ミサイル3発を発射したそうだが、今日になっても、何ら関連報道をしていない。

 まず、昨日の発射状況は、韓国軍の発表によると次のとおりである。

  • 25日午前6時、6時37分、6時42分頃、北朝鮮平壌順安(スナン)一帯から東海に向かって弾道ミサイル計3発を発射
  • 1発目:飛行距離約360キロメートル、高度約540キロメートル。火星17型の可能性指摘(今年のICBM発射は、今回を含め6回)
  • 2発目:高度約20キロメートルで消失(発射失敗の可能性)
  • 3発目:飛行距離約760キロメートル、高度約60キロメートル。北朝鮮版イスカンデル(KN23)の可能性指摘(2発目も)

 

 これで、北朝鮮がミサイル発射を行ったにもかかわらず、関連報道を行いわないことが5月に入って4回続いたことになる(5月4日ICBM発射、7日SLBM発射、12日「超大型放射砲」発射)。その理由については、13日付け本ブログでも若干言及したが、改めて整理すると、発射の失敗、報道方針の変化の両方の可能性を否定できない。

 発射失敗の可能性については、今回の場合、2発目がそうである可能性が高いようだし、1発目についても、火星17であるとするなら、飛距離・高度などが想定される最大値からは、相当低い段階にとどまっている。こうした中途半端な打ち上げを繰り返す理由が不明で、最大値を発揮できていない可能性もあるのではないだろうか。

 次に報道方針の変化としては、手の内を見せないことにしたとも考えられるが、その場合、可能性は二つ考えられる。一つ目は、「抑止力」に関する考え方に変化が生じたということ、すなわち、これまでは、実力を明確に(あるいは過大に)誇示することによって、「抑止力」の効果を高めようとしていたが、むしろ、実力を曖昧にすることによって、相手方の不安を誘い、それによって「抑止力」の効果を高めることができると考えるようになったという可能性である。

 二つ目は、こうした核・ミサイル戦力について、「抑止力」としての機能よりも、むしろ実際の使用を前提とした攻撃力としての機能を重視するようになったということである。実際に使用することを前提とするなら、自分の手の内を晒すこと、すなわちミサイル実験の内容・目的・結果などを公開するというのは、愚の骨頂ということになろう。

 現時点では、このいずれとも断じがたいが、最後のシナリオだとすると、恐ろしいことになる。「まさか」と思いたいが、「まさかが人を殺す」という韓国のことわざもあるようなので、慎重に注視していきたい。