2022年6月20日 論説「党決定は革命の要求であり人民が与える至上の命令である」
標記論説の掲げる「党決定」というのは、当面、先の中央委員会全員会議の決定を念頭に置いたもののようで、まず、「党中央委員会第8期第5回全員会議の決定を徹底して貫徹することは、時代と革命の切迫した要求としていっそう浮き彫りになっている」とした上で、「(同)全員会議で提示された戦闘的課題はその一つ一つが現実性と可能性を具体的に打算し作成されたものだ」と主張している。
また、その意義について、「(同)決定には人民の生命安全をしっかりと守り生活を安定向上させるため至急に解決すべき切迫した問題が反映されている」との事情を挙げた上で、「人民の天のような信頼を無条件的に守り、人民の期待に忠実に報いなければならないというのが我が党の崇高な志である」ことを、その貫徹の必要性の根拠として挙げている。
また、その実践上の課題としては、「今日、党決定を徹底して貫徹する上で第一に警戒すべきことは、無責任と無能力、消極性である」として、幹部の奮起を訴えている。
先の中央委員会全員会議については、特段の新たな路線・政策も示されず、何のための会議であったのか、その決定の具体的な意味が何であったのか、よく分からないままであったが、この論説を読んで、それに対する一つの答えを得たような感じを受けた。
それは、端的に言えば、9つの分科会の場で、それぞれの部門の担当者に自ら、コロナ発生等の現状を踏まえた下半期の個別・具体的な課題を再設定させることであった。「現実性と可能性を具体的に打算」という表現がそれを示していると考えられる。
そして、そうした課題は、おそらく、産業構造の強化といった長期的な目標よりは、当面の人民生活の「安定向上」を主たる目標にしたものであったのであろう。更に言えば、「至急」あるいは「切迫した」という言葉が繰り返されていることからすると、それは、実際には「向上」よりも「安定」が中心であったと考えられる。「党」すなわち、金正恩は、そうした「安定」を回復できなければ「人民の天のような信頼」を失うとの危機感を持って、同会議に臨んだとも考えられる。
また、現状の問題としては、幹部の「無責任、無能力、消極性」がそうした問題解決のネックとなっているとの認識があるのであろう。
同全員会議で異例にも「組織問題」が第1議題とされたことについて、その背景・理由が注目されたが、以上のような見方に基づくなら、今次会議のハイライトである分科会での協議に先立ち、それを指導する各部門の幹部陣容を整理しておく必要があったからと説明することができよう。「無責任」等の評価を下された更迭寸前の幹部にそうした協議の運営を託すわけにはいかないからである。
果たして、北朝鮮が新陣営の下、下半期において、そうして設定された課題を実現することができるのか、大いに注目されるところである。