rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年11月10日 評論「偉大な首領を高く奉じた人民の胆力と覚悟(배심) 主体朝鮮の進軍を止める力は世の中にない」

 

 米韓合同空中訓練に対応する「軍事作戦」に関しては、7日に、その実施が大々的に報じられたものの、それ以降は、国内の「反響」などフォローアップの記事がほとんどなかったところ、標記評論が間接的ながら言及し、その意義を論じているので、その部分を中心に紹介したい。

 同作戦に関する部分は、「最近、敵どもの戦争挑発狂気を粉砕するための我が革命武力の確固として圧倒的な実戦的軍事措置に対する激動的な報せは、全国人民に必勝の信念と勇気をはぐくんでいる」というものである。

 また、同作戦の狙いを示唆するものとして、次のような主張もある。

「我々が踏み立っている土地は大きくはないが、いかなる強敵も敢えて見下すことのできない最強国の尊厳と威容を轟かせていく。いまだ生活が豊かでなくても、我々が住む祖国はすべての人民の真正な幸福と光明な未来が確固として担保される社会主義万福の土台である」

 もちろん、そうした業績は、ひとえに金正恩に帰し、「今日、我が共和国は、主体革命の卓越した首領であられる敬愛する金正恩同志を陣頭に高く奉じ世界で最も強い国、前途洋々たる国として、世界中に光を放っている」と主張している。

 同評論は、これに続き、過去10年間の金正恩の実績を縷々のべている(それが主たるテーマ)が、それについては、省略する。

 いずれにせよ、前掲のような主張は、要するに、実際的な生活上の不便・不足を対外的な「尊厳・威容」の発揮によって代替する論理といえる。今次「軍事作戦」実施の最大の目的も、そうした「尊厳・威容」を保全することにあったのではないだろうか。「保全」というのは、米韓の軍事力誇示に対して、「手出しできない」という解釈が生じることを防ぎたいという意味である。今次作戦は、それを懸念しての措置であったと考えられる。それ以上の積極的な「発揮」とまでは言い難いことは、前述のとおり、その後のフォローアップがほとんどないことからもうかがえるところである。

 なお、韓国軍発表によると、9日午後3時31分ころ平安南道粛川付近から東(日本)海上に短距離弾道ミサイル1発が発射された(飛距離約290㎞、高度約30㎞、速度約マッハ6)とのことである。機種については、KN23,KN24などの新型ミサイルのうちの一つとの見方しか示されていない。韓国軍が独自に実施中の「太極」演習への対抗措置であろう。

 ちなみに、2日 午前8時51分ころ江原道元山付近から発射されNLL南側に落下したミサイルについては、その残骸が韓国軍により引き揚げられた結果、ロシア(ソ連?)製の地対空ミサイルSA5であったことが判明した由である。同ミサイルは、ロシアも、現在、ウクライナに対する地上攻撃用に使用しているとのことである。いずれにせよ、先般の「軍事作戦」で使用したミサイルは、新旧取り混ぜたものであったようである。