rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年11月27日 金正恩が火星砲17発射功労者と記念撮影、開発関係者を昇格

 

 本日の「労働新聞」は、先の「火星砲17」の発射に関連して、①金正恩が発射功労者と記念写真を撮影、②発射に用いられた台車(TEL)に「共和国英雄」称号など授与、③火星砲17の開発に貢献した国防科学部門関係者の軍事称号(階級)格上げ、に関する記事を一挙に掲載した。

 まず、①に関しては、実際の撮影日時は示されていない。添付の写真からすると、実際に発射を行った「赤い旗中隊戦闘員」及び開発・製造に当たった「国防科学研究機関の幹部と科学者、技術者たち、軍需工場労働階級たち」と、それぞれ別々に撮影を行ったとみられる。

 これには、いずれも金正植(党軍需工業部副部長)、張昌河(国防科学院長)が参加したとされる。また、金正恩には、「尊貴なお子様」が同行したと伝えら、発射時に同行したのと同じ娘の姿を映した写真が何枚も掲載されている。同娘については、韓国報道では、次女・柱愛(音訳)と推測されているとのことであるが、顔つきのみならず、服装・挙動なども母親・李雪柱にそっくりとの印象を禁じ得ない。

 撮影時の金正恩の発言のうち注目されるのは、開発・発射に直接関与した者への言及に先立ち、まず同ミサイルの開発を支持声援した「我が人民の衷心と愛国心に感謝を禁じ得ない」と述べ、「人民に熱い感謝を捧げる」としている点である。もちろん、「力と力による対決がすなわち勝敗を決定する今日の世界において、弱者ではなく第一強者になるときにこそ、国と民族の現在と未来を守り抜くことができる」との認識の下、「限界のない国防力強化」に努める意向も改めて示している。

 次に②は、11月26日付けの最高人民会議常任委員会政令として、先の火星砲17試射について、「社会主義朝鮮の気象を全世界に力強く誇示した歴史的壮挙であり、半万年民族史に長く輝く特大事変」と位置付けた上で、それに用いられた「『火星砲17』型発射台車第321号」に対して、「共和国英雄称号とともに金星メダル及び国旗勲章第1級を授与する」というものである。馬鹿げた感じもするが、それだけ嬉しいということであろうか。

 更に③では、やはり11月26日付けの党中央軍事委員会委員長命令として、「我々式の主体的な最強の戦略武器を完全無欠に完成することによって力強く尊厳高い核強国の偉大な位相をより雄壮に高めた国防科学研究部門の指導幹部と科学者」の軍事称号(階級)を昇格させるものである。その対象は、張昌河(国防科学院長)と金正植(党軍需工業部副部長)の両名を大将に任じたのをはじめとして、上将に1人(康敬浩・核武器研究所副所長?)、中将に2人、少将に9人、大佐に19人、上佐に44人、中佐に18人、少佐に3人、大尉以下に8人などあわせて106人にのぼる。

 「火星砲17」の開発成功に対するこうした大々的な顕彰・宣伝が、今後の更なる軍備増強の号砲であるのか、あるいは、核戦力増強はこれを以って一応の打ち上げとし、今後はむしろ経済建設に集中していくのか、見極めが必要であろう。伝えられる金正恩の主張をはじめとする報道内容を額面どおりに受け止めれば、間違いなく前者ということになろうが、例えば、2017年11月の火星15号発射に伴う「国家核武力完成」言説の喧伝の後に経済建設集中路線が提示された経緯を回顧すると、後者の可能性も排除できないように思われる。