rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年2月1日 評論「帝国主義の侵略と略奪対象は自分のものがなく他人に依存する弱者である」

 

 標記評論は、他国の例などをあげつつ、「自分のものがなく他人に依存し経済的発展を成し遂げようというのは妄想である。それは、すなわち亡国の道である」ことを論証し、北朝鮮の自主路線の正当性を主張するものである。

 まず、経済援助について、「今日、帝国主義者は、軍事的力と共に『援助』と『協力』を自己の目的実現のための重要な手段とみなして、財布をふりまわしている」のであり、「帝国主義者の『援助』の目的は明白である。立ち遅れた国と自分の気分に合わない国を政治経済的に隷属させ自分の秩序に服従させることである」と主張する。

 また、国防力に関しても、「自分のものがなく他人に依存して自分を守ろうというのは帝国主義者に侵略の道を開いてやり、自ら自滅を乞う愚かな行いである」として、「帝国主義者の奴隷にならないためには、第一にも第二にも力、国防力が強くなければならない。そうしてこそ、国と民族の現在と未来を守り抜くことが出来る」と主張する。

 そうした主張の実例として、アフリカの「ある国」が、「政治的にも経済的にも安定した国として認定されていた」が、「一朝一夕にして崩壊し極度の政治的混乱に陥り、国家の存在自体を維持できなくなった。政府の統制的機能は麻痺し、無政府状態が造成された」ことを上げ、「(その)基本原因は、まさに経済発展一面だけを考えて自分の軍事的力を強化することを疎かにしたことにある。大国に期待をかけて自力を育てる考えをまったくしなかったのである」と主張している。

 こうした教訓に基づき、「したがって、我々は、それほど事情が苦しかったが不屈の闘争を展開し国の自主権と民族の富強発展を担保する強力な軍事的土台を築いた」のであり、「万一、我が共和国が大国主義者の圧力に負けて自立的民族経済建設路線を放棄し統合経済体系に入っていたなら、自主、自立、自衛の社会主義国家を打ち立てることはできなかったであろう。自衛的国防力を建設していなかったなら、国の自主権を守護することはできず、経済建設について考えることさえできなかったであろう」として、これまでの路線の正当性を主張する。

 その上で、今後についても、「我が人民は、これまでと同様に今後も自主の原則を確固として堅持しつつこの地に繫栄する社会主義強国を必ず打ち立てずにはやまないであろう」との決意を披歴している。

 以上のような本評論の主張を整理すると、①外国からの「援助」に対する依存すること及び②経済成長のみを重視し国防建設を疎かにすることの2点について、いずれも帝国主義に屈する道であるとして戒め、経済的自立、国防力強化をセットとして推進すべきことを訴えるものといえよう。ここで注目されるのは、①及び②がやや混在する形で提起されており、両者の関係は必ずしも明らかにされていないことである。

 それは、結局、本評論が、国防力強化のため核開発を続ける一方、そのコストとして経済制裁を受け続け経済建設面での制約を甘受するのか、あるいは、核開発を放棄することで「援助」獲得の道を開き経済発展を加速するのか、という北朝鮮が迫られている選択を前提としつつ、前者の正当性(後者が「妄想」「亡国の道」であること)を主張することを狙いとして書かれたものであるためであろう。

 したがって、こうした評論の掲載は、北朝鮮国内において、それがいまだに議論の余地のある問題となっていることを示唆するものとも考えられる。ただ、本評論が掲載されたのが第1面であれば事態は深刻とみるべきであろうが、実際は、国際関係・海外事情などの記事が多い第6面での掲載であったことからすると、この議論は、現時点では、さほど重要なものとはなっていないのかもしれない。