2023年4月11日 党中央軍事委員会第8期第6回拡大会議の開催を報道
本日の「労働新聞」は、標記会議が、4月10日、金正恩の「指導」のもと開催されたことを報じる記事を、韓国地図の特定地点を指さして発言する金正恩の姿などの写真を付して掲載した。その骨子は、次のとおりである。
- 参加者:「軍事委員会主要メンバーと朝鮮人民軍前線大連合部隊(軍団)の指揮官達」
- 現状認識:「米帝と南朝鮮傀儡逆徒の侵略的な軍事政策と行為が脅威的な実体として浮上している」、「『平壌占領』と『斬首作戦』という好戦的な妄言まで露骨的に流して我が共和国との全面戦争を仮想した大規模合同軍事演習を狂乱的に敢行した敵どもは・・侵略的正体を行動によって明白に示している」
- 討議・決定事項:「現情勢を深度をもって分析したことに基づき、・・敵どもがいかなる手段と方式でも対応が不可能な多様な軍事的行動方案を準備するための実務的問題と機構改編的な対策(複数)」を討議・可決
- 金正恩発言:「朝鮮半島(の)安全状況をより厳格に統制管理するための対策として・・我々の戦争抑制力をより実用的に攻勢的に拡大し効果的に運用しなければならない必要性について強調」
- 会議意義:「敵どもの戦争挑発策動に対処した我が党と共和国政府の立場をより鮮明にし(た)」
同会議の開催は、北朝鮮が戦術核戦力の実戦化・多様化に向け先般来活発に実施してきた各種訓練・試験などの結果を踏まえて、前線部隊における戦術核運用態勢の充実を図る(あるいは、それをアピールする)ためのものと考えられる。
そこで注目されるのは、そうした軍事力整備について、①米韓の軍事的脅威への対応のため必要なものであること、②抑止力向上による状況の「統制管理」を狙いとしたものであること、を強調していることである。こうした主張は、これまでの様々な軍事活動などに際しての報道や金正恩発言などでも繰り返されてきた。
このうち、①については、多分に国内向けの意味合いもあるように思われる。経済的困難が続く中で軍事力整備を加速することに対する何らかの不満を意識した上で、それなりの説明が必要と認識しているのではないだろうか。
また、②については、抑止力(=核戦力)の機能発揮(=戦争防止)のためには、抑止力の実効性誇示が必要という金正恩の確信とあわせて、北朝鮮の「本音」と考えてよいのではないだろうか。
最後に、記事にも写真にも李炳哲(軍事委副委員長)の姿がみえない。先般来の活発な軍事活動に際しても姿を現しておらず、動静が注目される。