rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年6月3日 5月の人民経済計画遂行状況を報道(6月4日加筆版)

 

 朝鮮中央通信は、本日、「人民経済各部門、単位において5月人民経済計画完遂」と題する記事を報じた。同記事が部門全体(「○○省的に」など)として同月の人民経済計画の「完遂」ないし「遂行」(どう違うのかよく分からないが)を報じた部門は、次のとおりである。

  • 「化学工業省的な5月計画を完遂した」
  • 「電力工業省的な5月計画が遂行された」(「水力発電単位では電力生産計画を日別、週別、旬別に遂行した」)
  • 「機械工業省的な月計画を指標別に完遂した」
  • 林業省的な月計画を成果的に結束した」

 なお、その他の部門については、大略次のように報じられている。

  • 金属工業部門:「地方工業工場建設に必要な今年の鉄鋼材生産が期限前に結束された」
  • 石炭工業部門:「重要工業部門と単位により多くの石炭を生産保障した」
  • 資材工業部門:満浦製錬所など個別企業所の成果のみ報道
  • 鉄道運輸部門:「機関車の修理整備時間を短縮」など取り組み状況のみ報道
  • 建材工業部門:「価値ある技術革新案を生産に導入し実績を上げた」
  • 農業部門:「150余の市・郡で基本面積の田植えを結束した」

 総じて、そこそこの成果と言うべきであろうか。ただ、気になるのは金属工業部門の報道内容で、地方工業工場建設を優先するあまり、その他の部門への供給に支障が生じていることがうかがわれる。金正恩の鶴の一声で、本来予定されていなかった「地方発展20×10政策」を無理に開始したことの「付け」ではないだろうか。

 なお、「労働新聞」は、通例、毎月初めに前月の各部門の経済計画遂行状況をまとめて報じる記事を掲載するのだが、今月は少なくとも今日までのところ、そうした記事は掲載されていないようである。

以下6月4日加筆

2024年6月4日付け「労働新聞」は、「今年の目標占領へと確信をもって進む継続革新、連続攻撃の気象、人民経済諸部門と単位において5月人民経済計画完遂」と題する記事を掲載した。

 同記事が部門全体としての計画完遂を明言しているのは、

  • 石炭工業部門について、「5月石炭生産計画を104%で完遂した」
  • 製鉄部門について、「5月銑鉄生産計画を100.1%、圧延鋼材生産計画を103%で遂行した」

だけである。

 一方、前掲朝鮮中央通信の記事で部門全体(省的)での計画完遂を報じられた部門については、例えば化学工業部門について「5月計画遂行において顕著な結実を収めた」とするなど、いずれも計画完遂とは表現していない。

 「労働新聞」の記事は、どちらかというと各企業所単位の取り組み状況、成果に脚光を当てるものではあるが、部門全体で計画を完遂できているのであれば、それを書かない理由はないと思われる。それに関し、両記事の間でこうした違いが出るのは何故であろうか、不可解としか言いようがない。