2024年8月7日 新型戦術弾道ミサイル武器体系の受け渡し記念式への「娘」の出現について(補足)
8月4日に挙行された標記記念式において、久々に「娘」が出現したが、報道記事中に直接の言及のなかったことは、8月5日付け本ブログにおいて紹介したとおりであるが、その際の関連状況及びその意味について、遅ればせながら、若干、補足しておきたい。
同式典に関する朝鮮中央テレビの報道画像によると、「娘」は、金正恩と同じ専用車両に乗って式場に到着し、金正恩とは反対側のドアから下車、金正恩とほぼ並ぶようにしてひな壇に向かった。式典開始前に金正恩が展示されたミサイル発射車両をのぞき込み、説明を受けている間は、やや距離を置いて後方に位置し、余り興味なさげに隣にいた崔善姫外相と何やら談笑するなどしていた。その後、金予正のエスコトートを受ける形で、金正恩の左側2列目(最前列には、趙春龍党秘書(同式典の準主役)、金徳訓総理が着席)の中央から2番目に着席した(2列目の中央1番目には崔善姫外相、3番目には金予正が着席)。なお、金正恩の右側には、朴正天及び軍高官が着席していた。そして、式典終了後は、到着時と同様、金正恩に寄り添う形で専用車両に向かい、反対側ドアから乗車し会場を離れた。
要するに、今次式典では、「娘」について、記事中に直接の言及がなかっただけでなく、会場での位置づけも、以前のような他の幹部とは別格の、むしろ金正恩に準じた扱いではなく、むしろ、高位幹部のうちの一人といった扱いであった。
こうした位置づけは、「嚮導の偉大な方々」などと表現した江東総合温室竣工・操業式出席時(3月15日)はもちろん、「愛するお子様」との表現があった前回出現時(5月14日、「前衛通り」竣工式)に比較しても、相当控えめなものであったといえよう。また、出現の頻度も、前々回から前回までが2か月、それから今回までが約3か月と、それ以前に比較すると、相当低下の印象を否めない。
こうした動向をもって、直ちに「娘」のショウ・アップの動き(それが「後継者」化のためのものか否かは不明であるが)がペース・ダウンしたと断言することは早計であろうが、少なくとも、そうした動向に何らか一進一退的な振幅があることは指摘可能であろう。果たして、その振幅の背景にいかなる事情ないし思惑があるのか大いに関心がもたれるが、残念ながら推測の手掛かりが見当たらない。こればかりは、内部情報に頼らざるを得ないのだろうか。
余談ながら、崔善姫外相が前述のとおり「娘」の上座(左側2列目中央1番目)に着席したことも注目される。同人は、以前、衛星成功の祝賀宴会に出席したこともあり、何らかの形(おそらくはロシアからの協力取り付け)でミサイル開発等に貢献している可能性があろう。ただし、同人については、例えば、党中央幹部学校開校式の際、幹部一同が中庭のようなところで懇談の場面で金正恩と同じベンチに座っていたことがあることなどから、金正恩の「覚えがめでたい」とも思われ、今回の式典参加も、そうした関係の反映であるのかもしれない。この辺も、不透明なところである。